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NHK天安門事件解説の不謹慎

Japan In-depth / 2019年6月4日 0時45分

さらに中国政府を表わすドラゴンが急に爆発するかのように音響を発する。弾圧が起きたという意味なのかもしれないが、スタジオのタレントたちは、「キャー」とか「ワハハハ」という反応だった。要するに数えきれないほどの人間が生命を奪われたあの事件をおもしろおかしな出来事のようにカリカチュア化していたのだ。


同番組の後半では天安門事件で民主化に同調したかつての若者たちの現状を紹介もしていた。だが実際の生身の人間が貴重な命を不当に奪われたという人間的悲劇、人道主義上の惨劇への鎮魂や追悼という姿勢はまったくうかがわれなかった。多数の人間の命を奪った側の中国共産党政権はいまにいたるまでその非を認めず、死者の数も含めて、事件全体を隠しとおそうとしている。このNHK番組はその点での民主主義や人道主義に基づく非難や糾弾もツユほども感じさせなかった。


番組の紹介には「学生らの運動が武力で鎮圧され多くの死者が出た天安門事件。今も中国最大のタブーとして事件の情報は隠されている。関係者の証言で当時を振り返りつつ今の中国を読み解く」という記述もあった。だが実際の番組では出演者たちは一貫して、いわゆる軽いノリ、笑いをもらしながらの対応が目立った。


一方、私は民間の「チャンネル桜」というテレビグループの天安門事件30周年を語る番組に招かれた。6月1日に放映された3時間もの討論番組だった。7人ほどの中国や米中関係の専門家たちの討論だった。


その一人が著名な中国研究者の石平氏だった。天安門事件にも直接にかかわった中国での民主活動家で、いまは日本国籍を取得している。この討論のはじめの部分で他の討論者が当時の天安門広場の拡大地図をみせて、抗議集会参加者の集まりぐあいと、人民解放軍部隊の乱入と攻撃の様子を再現した。



▲写真 中国人民解放軍の59式戦車 出典:Wikimedia Commons; Max Smith


するとそれまで意見をときおり述べていた石平氏が突然、沈黙してしまった。私の向かい側に座っていた彼をついじっとみると、彼は必死で涙をこらえているのだった。だが大粒の涙がどっとこぼれた。そして石平氏は顔を伏せ、頭を抱えて、声を抑えながら、しばらく泣いていた。明らかに当時の同志や友人たちが殺された模様を思い出し、悲しみに襲われていたのだ。私はこれこそが天安門事件の被害者側の反応なのだと実感した。


トップ写真:天安門 出典:Wikimedia Commons; 张瑜


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