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何も解決しないトランプ外交

Japan In-depth / 2019年6月17日 8時39分

もちろんこれはハッタリなのだが、ウォール街ではさっそく株価が下がるわ、常にトランプの味方であるはずの共和党議員が次々と関税は経済悪化を招くだけだと反対を唱え出すわ、トランプが期待するような効果は上がらなかったようで、さっそくこの発言は撤回している。


統計で見る限り、メキシコからアメリカに入国する違法移民は近年ずっと減り続けている。増えているのは、メキシコではなく、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなど、マフィアの暗躍で犯罪率が上昇している中南米の国から亡命した人たちがメキシコを通ってアメリカに難民申請をしているケースなのだが、トランプにはその違いがわかっていない。


アメリカ側は中南米からの難民に対し、亡命先をアメリカではなく、メキシコにさせるよう要求していた。これに対しメキシコは、自国独自の政策で違法にアメリカに入国する季節労働者を制限する対策を立てたので、45日間これを施行した後にその成果を見直す、という提案をしたのが先週。メキシコのエブラルド外相は、関税の脅しに対してこれ以上の協議はしていないと、先週はっきり否定したのだが、トランプ大統領はその翌日、マスコミ陣を前に、何も書かれていない白い紙を振りかざして「これはメキシコが秘密裏に譲歩した移民対策を書いた手紙だ」とパフォーマンスを見せてアイオワ州に向かった。



▲写真 マルセロ・エブラルド メキシコ外相 出典:Flickr; U.S. Department of State


何しろ、ちょうど今、全米で真っ先に大統領予備選を行うアイオワ州には両党の大統領候補が結集しているのだ。トランプはアイオワに乗り込んでさっそく、「スリーピー(眠たげな)ジョー」とデモクラッツの最有力候補であるジョー・バイデン前副大統領の悪口をツイッターに書き込んだ。


このようにトランプ大統領の外交策とは、遂行する気もない経済制裁や戦争の可能性を口にしては、それを撤回することで危機を回避したかのように見せるハッタリに終始することだ。北朝鮮のミサイル問題しかり、イランの非核化合意しかり。それにまんまと乗せられて、仲介役を買ってのこのこイランを訪問する国もあるが。


 


トップ写真:USMCA調印式(2018年11月30日)左からエンリケ・ペーニャ・ニエト 元メキシコ大統領、トランプ米大統領、ジャスティン・トルドー カナダ首相 出典:Flickr; The White House


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