「一国平和主義」への非難 集団的自衛権の禁止とは 3
Japan In-depth / 2019年7月5日 12時3分
▲写真 日米共同訓練(2015年9月 陸上自衛隊王城寺原演習場)の開始式 出典:防衛省ホームページ
近年、日本の防衛は集団的自衛権の行使をいかなる場合にも禁じるという憲法解釈のために崩壊への大きな危険にさらされてきた。アメリカ側からそういう警告がもう長い間、発せられてきたのだ。だからこそ歴代政権のなかでも同盟や軍事にはきわめて消極的なオバマ政権でさえ、日本が集団的自衛権を行使できるようにすることを求め、安倍政権の平和安保法制への動きにも歓迎の意を述べたのである。この事実はいまの日本でのトランプ大統領の日米同盟批判への反応とは根本から異なるのだ。
日本の集団的自衛権の行使解禁を求める声は20年以上も前からアメリカ政府の内外から、しかも民主、共和両党からともに一致して発せられてきた。アメリカ側のその軌跡をたどると、日本がいまなぜ集団的自衛権の行使を解禁すべきか、という問いかけへの答えがはっきりと浮かびあがる。
アメリカが日米同盟への不満や警告を明確に発するようになったのは1990年代なかばからである。その警告は、日本の集団的自衛権の行使禁止による極端な片務性がいつまでも続くと、日米同盟の実効が薄れ、いざという有事には同盟としての共同防衛機能が果たせないどころか、アメリカの防衛行動を阻害までしうるため、同盟は崩壊の危険にさえ直面する、という骨子だった。
東西冷戦中は、アジアでもソ連の軍事脅威が強大であり、アメリカは全力で対決した。日本のような同盟国への軍事依存も、前線の基地利用が主体であり、実際の作戦面での日本への期待は少なかった。日米同盟が片務的でも、日本が有事になにもできなくても、問題にはせず、自力で戦うという態勢だったのだ。日本を軍事的に強くすると、またアメリカへも悪影響を生むかもしれないという日本不信もまだ残っていたといえよう。
ところが1991年12月のソ連邦の完全解体で東西冷戦が終わると、アメリカの対日同盟政策も微妙な変化をみせ始めた。日本の防衛貢献への期待が増し出したのだ。ある意味では日本への不信が減った結果でもあった。日本がそれまでよりも軍事面で能力を高め、対米協力を増しても、あくまでアメリカのパートナーである限り、歓迎するという態度だった。
だが前述の湾岸戦争での実例のように、日本はよくいえば、「一国平和主義」、悪くいえば、「ただ乗り」の洞穴のなかから出てくる気配はなかった。
(1、2の続き、4につづく)
トップ写真:海自護衛艦「いずも」を視察した安倍首相とトランプ大統領(2019年5月28日)出典:首相官邸 facebook
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