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日米同盟解消の主張も 集団的自衛権の禁止とは 4

Japan In-depth / 2019年7月7日 23時0分

ただし同報告書をまとめた「ケイトー研究所」はアメリカの国政の舞台でもリバタリアンと呼ばれる極端な個人の自由やアメリカの孤立主義をも唱えるグループの中核である。だから彼らが唱える日米同盟解消論は当時でも極端な少数派の意見だされた。だがそれでも日米同盟の片務性非難の部分は決して少数派の声ではなかった。さらに日米同盟解消論もまったくの例外的な主張ではなくなった。



▲図 台湾海峡。向かい合う台湾と中国本土。出典:パブリック・ドメイン


同じ趣旨の主張はこの時期、他でも顕著だったのである。アジア政策の民間の権威だったカリフォルニア大学のチャルマーズ・ジョンソン元教授は有力外交雑誌「フォーリン・アフェアーズ」95年8月号に発表した長文の論文で同じように日米同盟の解消を提言した。その骨子は次のようだった。


「アメリカは日本防衛のために莫大な代価を払っているのに、日本は集団的自衛権の禁止を口実に自国の安全保障はもちろん、地域的、国際的な安保課題への責任も負わない異常な国となっている。同盟国が攻撃を受けても座視するままだ。日本がアメリカのアジア戦略保持の真のカナメとなるには集団的自衛権の行使をはじめとする日米同盟の双務的結びつきへの変質が欠かせない。それができない場合、有事にアメリカにとって役に立たない同盟は平時に解消しておくべきだ。」という主張だった。


このように日本の集団的自衛権の行使禁止をアメリカ側からみての日米同盟の重大な欠陥だとする認識は、この時期でもすでに超党派の主張となっていた。


アメリカでも最大手の外交研究機関「外交問題評議会」の超党派専門家集団が1997年8月にまとめた日米防衛についての報告書も日本の集団的自衛権禁止を「日米同盟全体にひそむ危険な崩壊要因」と定義づけていた。そして日本側に率直にその点での政策修正を求め、「同盟をより対等で、より正常な方向へ」と促していた。


外交問題評議会自体は民主党に近く、時の民主党クリントン政権ともつながりが深かった。その報告書の作成にあたった専門家は約40人、ハロルド・ブラウン元国防長官、リチャード・アーミテージ元国防次官補らが名を連ねていた。



▲写真 ハロルド・ブラウン元国防長官(左)とリチャード・アーミテージ元国防次官補 出典:いずれもパブリック・ドメイン


この報告書の特徴の一つは、朝鮮半島での戦争や台湾海峡での軍事衝突というシナリオに日本の支援を盛りこんでいないことだった。日本は集団的自衛権の禁止により、実際には米軍へのなんの支援もできないだろうと最悪の可能性を想定していた。そのうえで有事に日本のそうした回避があらわになれば、アメリカ国民は衝撃的に失望し、日米同盟自体が危機に瀕すると警告するのだった。


(1、2、3の続き。5につづく)


トップ写真:夕食会に臨む安倍首相とトランプ大統領(2018年9月23日 ニューヨーク)出典:首相官邸 facebook


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