「自国へ帰れ」トランプの本音
Japan In-depth / 2019年7月19日 12時47分
これまでの新米議員であれば、大人しく地味な委員会に振り分けられ、先輩議員のやり方を見習い、コツコツと自分の名を冠した法案に賛成してもらえるよう働きかけたところが、勝手に、法案でさえない「声明」を発表したり、SNSで上層部を批判し、ベテランであるナンシー・ペローシ下院議長にさえ楯突くラディカルな行動に出た。
▲写真 ナンシー・ペローシ下院議長 出典:Public domain
一方で、デモクラッツで一致団結して、来年の大統領選に臨みたいペローシ議長は議員全員を集め、「下院は弾劾を求めない方針であり、選挙戦では国民健康保険改革を中心に有権者に訴える」「幹部や党の方針に不満があるのなら、SNSではなく、直接言ってこい」そしてさらにマスコミのインタビューに答え、「ネットで大騒ぎをしても、下院では4票の力しかない」と牽制した。
4人組はこれを「マイノリティー議員に対する攻撃」とまで批判し、内部分裂寸前だったのだが…。
ここに、トランプの差別発言である。ペローシ下院議長に加勢したのではなく、デモクラッツはこうやって仲間割れして、国民のことなど考えていないと言いたかったようだ。下院が大統領弾劾に向かって動けば、それを盾にとって「攻撃されている俺様に加勢してくれ」と再選へのアピールにしたいという思惑もあったろう。
4人組の議員はさっそく合同記者会見で大統領を強く非難する声明を出したが、大統領は「アメリカがいやなら誰だって出て行く自由はある」と表明。人種に触れず、だが発言を撤回する気配も見せなかった。これを受けて、ペローシ議長は大統領の差別発言を議会に対する行政府の攻撃として、下院で非難する決議をとった。結局、ほとんどの共和党議員は「大統領は人種差別主義者ではない」とトランプを擁護したが、数人がデモクラッツ側に回り、決議は採択された。ペローシ議長は、政策や方針で仲間割れをすることもあるが、だからといって大統領側につくわけではないというメッセージを送り、母親が奔放な娘を守るように4人組を擁護したことになる。
この話はこれで終わったわけではなく、トランプは再選に向けていっそう移民を痛めつけ、女性を侮辱し、差別発言をすることで白人票を取り込むことに固執するだろう。
トップ写真:トランプ米大統領(2019年7月18日 ホワイト・ハウス)出典:flickr; The White House
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