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フランス、脱階層社会の試み 上

Japan In-depth / 2019年8月8日 7時0分


▲画像 lesson by pixabay


フランスでは、男女教育だけではなく、現在は全体を通して「混ぜる」ことが意識されている。特にフランスは長年にわたり社会階層がくっきりと分れ、しかも固定化してきた。こういった状況は、多くの差別や争いを生み出し、問題も多く存在した。そこで問題解決するために長年努力してきたのである。階層間の壁を無くすために、さまざまな階層や民族が共生するソーシャル・ミックス(社会的混合)の概念を取り入れた都市計画もその一つだ。


ソーシャルミックスを取り入れた都市計画では低所得者用などの社会住宅を分散させることが盛り込まれている。フランスでは、戦後、工業の発展とともに、工場周辺に、社会住宅が大量に建設された。これらの住宅団地では、オイルショック以降経済が低迷し工場が激減した後、移民、低所得者などの社会的弱者が集中するようになっていく。その結果、住宅の劣化に加え、失業、バンダリズム、軽犯罪などの多くの社会的問題を抱える地区となっていったのだ。一定の社会階層が、限られた地区に集中することでこのような社会問題の要因の1つを生み出したのである。


そこで、パリでは1991年7月13日の都市基本法で、ソーシャル・ミックスの概念を初めて取り上げ、都市圏内で均衡ある社会住宅配置を目的に、社会住宅の少ない市町村にその建設を促す取組を定めた。そして、2000年12月に制定されたSRU(solidarité et au renouvellement urbains=都市連帯と都市再生)法により、3500人以上の住民を抱える都市では、全住宅戸数に対する社会住宅の最低比率を20%と義務付けている。2003年にボルロー法が定められ、2004年からはパリだけではなく、フランス全国で実施されることとなったのだ。


しかし住民たちに葛藤がなかったわけではないだろう。今まで一部の地域に隔離されていたはずの“問題”が、自分たちの街に持ち込まれることになるのだ。各街ではそれなりの反対運動が起こった。しかし、着々と実行されていったのだ。この結果、一つの地域に、同じ階層の住民が集中することがなくなり、子供たちが同じ学校にいくなどを通して相互理解ができるような環境になりつつある。


例えば、現在、私が住んでいる地域では、以前は特定住居を持たない人々との争いがひどく、夏祭りでは乱闘がしばしば起きていた。そのため、ある年など、外来者が来ないようにと夏祭りの告知を一切しなかったことまである。しかし、長くフランスに住んでいる特定住所を持たない人々を対象にした社会住宅ができ、子供たちが学校に通うようになってから、そういった争いが起こることがなくなったのだ。確かに、今まで学校に行ったこともなかった大勢の子供たちが来た当初は、学校は大混乱だった。が、それもほんの1カ月ほどで収まり、その後は、何年も問題がない状態が継続している。


(下に続く。全2回)


トップ写真:Kids playing in the Youth Rugby Exhibision match. 出典:flicker


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