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補助金の概念崩す「SIB」

Japan In-depth / 2019年8月10日 23時0分

そこで、新たなブランドを立ち上げることになった。それが新ブランド「BIWACCA」だ。学校や病院などに売り込む計画だ。



▲写真 NPO法人「愛のまちエコ倶楽部」事務局長・園田由未子氏 出典:著者提供


しかし、パッケージ作りにも費用がかかる。その調達の手法こそ、イギリスで広まっているソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)だった。民間から集めたお金を元手に、行政の事業をNPO法人などに委ねる手法だ。東近江市の場合は、一口2万円で市民などから出資してもらう仕組みだ。せっけんの新ブランド立ち上げには、合計50万円集めた。成果が出たら、行政側が、出資者にお金を返す。



▲写真 BIWACCA 出典:BIWACCA facebook


山口は話す。「市民の間では、『そんな事業を民間がやるなら、僕らは応援するよ』と、次々に出資してくれた。自分たちの出したお金で実際に事業が行われる。行政に投げるのではなく、市民参加型となる」。


事業をやる民間企業やNPO法人も自分たちで歩いて出資者を見つけなければならない。


「成果が出ないと、出資者にはお金が返ってきません。事業主体は、そうした事態は避けたい。そのため、事業に必死になります」




SIBの対象となるのは、市が採択した事業だ。事業主体は到達目標を設定し、期末に目標に達したかどうか判断される。




結局、市がお金を払うことから、財政的な負担は変わらないように見えるが、山口は「市民が地域の課題に当事者意識をもつことが大事だ。こうした仕組みを利用することで、行政に依存する意識が薄らぐ。『できることは自分でやる』。この仕組みで、そんな意識がつくられている。長い目で見れば、財政負担の軽減にもつながる」との考えを示す。




山口は専門家などと協議し、SIBなど地域のお金の流れをコーディネートする「東近江三方よし基金」の設立に動いた。「地域活動で、いつも問題となったのは、資金です。NPO法人などは融資を受けるのは、簡単ではない。補助金という枠組み以外で何かないかと検討し、基金の設立にたどり着きました」。




市と金融会社が基金を運営する東近江市版SIBの仕組みは、行政の補助金の概念を打ち破るものだ。補助金といえば、「縦割り」「無駄」「利権」といったマイナスのイメージがあるが、それとは全く異質だ。


山口は強調する。「これまでは市がその事業を審査して、補助金を出す。それきりだった。しかし、この仕組みは市民が自分たちで地域づくりをするきっかけになる」。




地域づくりはいかに住民を巻き込むかが大事だ。SIBはまさに、その媒介となる可能性を秘めている。


トップ写真:滋賀県・東近江市役所の山口美知子氏 出典:著者提供


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