公共施設、初のマイナス入札
Japan In-depth / 2019年8月15日 18時0分
さらに解体しても、その土地は、売却できなければ意味がない。買い手が簡単に見つからないケースもある。その間、維持管理費ばかり出ていく。
今回の旧小学校の体育館はまさにそうした例に当てはまる。深谷駅から6キロも離れていて、交通の便は必ずしも良いとは言えない。深谷市は実際、2015年と17年に建物の活用を前提として入札をかけた。予定価格は1780万円。しかし、手を上げる業者は現れなかった。元が取れないと判断されたのだ。
そこで仕切り直し建物の老朽化を踏まえ活用はできないものと判断し、解体条件付き入札の実施を決定した。まずは予定価格を再検討した。土地の評価額から建物の解体費用を差し引くと、金額はマイナスになった。つまり、解体撤去費用のほうが、土地より高くなった。
深谷市はマイナス入札について制度として可能かどうか、検討に入った。大野氏は「ほかの自治体で実施しているところがないか調査した。北海道の室蘭市が実施するのを確認でき話を聞いた」と語る。ただ、室蘭市では、実際入札にかけてみると、落札額はプラスになった。
深谷市はマイナス入札を制度設計する際、もう一つ、重視した点がある。その土地がどのように利用されるかだ。住民に親しまれてきた旧体育館だけに、市は、売りっぱなしというわけにはいかない。
そこで住宅を建てることを条件にした。それは市の「税収」にもつながる。市の試算では、そこに住宅が建設されれば10年間で固定資産税と住民税を合わせると、約1700万円の税収が見込めるという。
一歩遅れた形となった北海道室蘭市も今年3月、マイナス入札を実施した。対象となったのは、旧総合福祉センターの建物と土地だ。市が業者に対し、881万円支払う。こちらも落札業者による解体が条件となっている。跡地には有料老人ホームが建設される。
▲写真 北海道室蘭市旧室蘭市総合福祉センター 出典:twitter: 青山たけし@室蘭市長
公共施設の老朽化問題は、全国どの自治体も抱えている。更地にして売却できるような人気のある土地なら、更地にすればいい。解体費も無駄にならない。ただ、そんなところばかりではない。買い手のつかない公共施設は、いたるところにある。その場合、マイナス入札を導入し、民間に解体してもらうのは極めて合理的だと思う。深谷市や室蘭市のように住宅や老人ホームに生まれ変われば、住民サービスにも直結する。
人口が減少する今、従来の枠組みにとらわれるやり方を続けていては、一歩も先に進まない。「損して得取れ」。そんな気概をもった行政が求められる。
トップ写真:深谷市の体育館 出典:著者提供
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
建築総額1億7,000万円、家賃手取り年間110万円…「35年のサブリース、決断すべき?」70代不動産オーナーの絶体絶命
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 11時45分
-
バブル期700万円だった30坪も「5万円で売れた」なら幸運である…限界分譲地の「土地ババ抜き」というリアル
プレジデントオンライン / 2024年4月28日 9時15分
-
【更地にしても売れない“負動産”】相続税評価額は約800万円の土地なのに…不動産屋からいわれた「衝撃の売値」とは
Finasee / 2024年4月27日 13時0分
-
建設テックのクラッソーネと茨城県取手市が「空家等の除却促進に係る連携協定」を締結
PR TIMES / 2024年4月23日 16時15分
-
鎌倉の森に残された広大な昭和の遺構 近代建築の研究所跡地、ただいま一般開放中
まいどなニュース / 2024年4月7日 16時30分
ランキング
-
118歳の男を殺人などの罪で起訴、実名を公表 浜名湖高校生殺害
日テレNEWS NNN / 2024年5月2日 20時17分
-
2那須2遺体、指示役が都内の暴行現場で見張りか…周辺の防犯カメラで確認
読売新聞 / 2024年5月2日 22時4分
-
3「やっとスーパーに通える」 輪島・白米千枚田の国道が通行可能に
毎日新聞 / 2024年5月2日 18時29分
-
4腐敗した牛肉を「焼き肉のタレに漬け込めば臭いは消える」と食べさせ…大相撲・佐渡ヶ嶽部屋が元力士に訴えられた“ドケチいじめ”
文春オンライン / 2024年5月2日 17時0分
-
5「衝突したことが原因」海上自衛隊ヘリコプター2機が墜落した事故 訓練飛行をあすから再開
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月2日 16時22分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください