私のパフォーマンス理論 vol.33 -食事について-
Japan In-depth / 2019年8月24日 7時0分
為末大 スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役
2019年08月20日
【まとめ】
・トップアスリートが練習の質を高めるには、いかに疲労から回復するかである。
・回復方法は、大きく分けると睡眠と食事しかなく、食事は長期的に見ると重要度が高い。
・食事は、選択、バランス、タイミングが鍵となる。
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アスリートの回復方法は、大きく分けると睡眠と食事しかない。今回は食について。
食はすぐ効果が出ないので軽視されがちだが、長期で見ると重要度が高い。特に人間は1日に三度、アスリートであればもっと多くの数、何を食べるかを選択している。アスリートにとっての食のセンスとはつまり選択のセンスである。栄養士を雇えるほど裕福な選手になるという前提でなければ、選手は自分で選べるようにならなければならない。
イタリアンに行くか、ラーメン屋に行くかも自分で選ぶことができる。その中でも魚を食べるか肉を食べるかも、先に何を食べるかも選択できる。またいつ食べるかも選ぶことができる。この選択は小さな違いに見えるが、毎日積み上がっていくと無視できない大きさになっていく。一番影響が大きいのは回復に関するところで、トップアスリートになると練習の質を高めるには疲労からいかに回復するかしかなくなるので、食事の重要度はどんどん高くなる。バランスよく食べていない選手は長続きしない。
陸上はすべての国の選手が、同じ選手村に入り同じ食堂でご飯を食べるので、何を選んでいつ食べているのかというのを観察しやすい。私の知っている限り、日本人の栄養に関する知識は高い。もちろん栄養に気を使っている選手もいることにはいたが、全体として食に関するリテラシーは日本人が高い。一般的には回復の精度が本当に勝敗を分ける、長距離の方が栄養にはセンシティブで、短距離、跳躍、投擲あたりは比較的緩めだった。金メダリストがレースの直前にフライドポテトと揚げたチキンを食べているのをみて驚いたこともある。それはあまり栄養は関係ないじゃないかという見方もできるが、長期ではやはり影響が大きくなってくると私は考えている。
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