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限界商店街を再生した立役者

Japan In-depth / 2019年9月1日 18時0分

そこに登場するのは、「百貨さかい」を経営する酒井幸男だ。酒井ら商店主らは、アーケードかけ替えの補助金を獲得するため動いた。まちづくり推進協議会を立ち上げた。特筆すべきは、バラバラだった古町1番町から4番町をまとめたことだ。新たに、「上古町」が誕生した。


迫は、商店街の会合などに出席すると、いろいろアイディアが沸いてきた。「年配の人たちは町おこしといえば、祭りをやり、焼きそばやヨーヨーのお店を出せばいいという考え方でしたが、僕は『カミフル』という名称を売り出すため、情報発信が大切だと感じました」と振り返る。そして、「商店街のロゴは、誰に頼まれたものではなく、僕が勝手に作ったものです」。そのほか、地図を作ったり、ミニコミ誌を発行したり、イベントを開催したりした。酒井はいつしか、迫の後見役となった。旧態依然の商店主から反発があっても、「弾除け」を買ってくれたのだ。



▲写真 酒井幸男氏 出典:著者提供


結局、上古町商店街は、迫が仕掛けた活動実績などが評価され、最終的には96%国と市から補助を受けた。


そのアーケードの設計に関しては、色彩、照明、景観、街づくりの4人専門家にも協力を仰いだ。酒井は「雨露をしのぐだけではなく、歩行者のことを考え、滞在時間が伸びるようにした。また景観にも配慮した」と語る。


私自身、歩いてみて驚いた。歩道では、とにかく、人が優先されているのだ。車いすも十分通れる幅があり、ベンチもある。シールの貼ってある店舗では、トイレを借りることも可能だ。店舗の外ではなく、店舗内にトイレを設置すれば、お客さんは店に入ってくれるという。酒井は「たぶん迫くんが商店街に来なかったら、『限界商店街』を通り越して、存亡の危機だっただろう」と語る。


一方、迫は「ぼくは『街づくりをしよう』とあまり言いたくない。それよりは、『みんなで儲けましょう』という言葉が好きだ」と本音を語る。


全国至る所で、シャッター街が生まれている。商店主は、廃業しても、かつて儲けた時の預金や年金があり、十分生活していくことができるという話をよく聞く。ここ新潟でも、同じ現象が起きていた。しかし、それを覆したのは迫さんという「異分子」の存在である。そして、迫の「盾」となった酒井の男気である。


大型ショッピングセンターが進出しても、「受け身」の構えではシャッター通りとなるばかりである。「攻め」に転じることができるかどうか。商店街の度量が問われている。


トップ画面:新潟市古町「上古町商店街」 出典:著者提供


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