北東アジア情勢は日米関係をどう変えるか その2 トランプ政権完全非核化堅持
Japan In-depth / 2019年9月10日 18時0分
こんな最近の報道だが、いずれもトランプ政権当局者はまちがいだと断じる。だが日本のメディアもその米側の不正確報道を事実であるかのように転電する。
だがこの種の情報は反トランプに徹するニューヨーク・タイムズのような媒体から流れる場合がほとんどだ。政治上の対立が政権の外交政策の評価をも巻き込むのである。反トランプのメディアにはトランプ政権のすることはなんでも失敗と弾じる偏向姿勢が露骨なのだ。
トランプ政権の当事者たちはその種の報道を一貫して否定し、「完全な非核化」政策の堅持を強調する。ボルトン補佐官もなお北朝鮮政策の中核に位置している。だがワシントンでのそんな実情は東京にはなかなか伝わらない。
日本でのトランプ政権の北朝鮮政策の正しい読み方のカギはこのへんの偏向フィルターを除くことである。
表面でみる限り北朝鮮はこの2年ほどで国家としてのあり方を根幹から変えた。建国以来の米国敵視を止め、憲法で明記した核兵器保有も止めると宣言した。朝鮮民主主義人民共和国ではなくなるような変化だった。
この変化を起こしたのはトランプ大統領の2017年の国連演説での「北朝鮮の完全破壊」の威嚇だとする見解が米側では支配的である。ボルトン補佐官の次席として国家安全保障会議で活動したフレッド・フライツ氏はそう明言した。北があくまで核兵器や長距離ミサイルを保持するならば究極は軍事攻撃だというトランプ大統領の宣言に金委員長が恐怖に駆られたというのだ。
▲写真 ジョン・ボルトン大統領補佐官(左)とフレッド・フライツ安全保障政策センター所長(2018年3月) 出典:Fred Flieitz.com Photo Gallery
トランプ大統領は軍事手段をちらつかせて、厳しい経済制裁を続ければ、金委員長は必ず非核への道を進むとみているようだ。北朝鮮という核武装の無法国家の危険性を骨抜きにしつつあるという自信でもあろう。その先には朝鮮半島の米国が望む新秩序の展望がちらつくわけだ。日本にとっても歓迎できる新秩序である。
だから同大統領はゆとりをみせ、北朝鮮の短距離ミサイル発射にも動揺を示さない。日本にとっては不満な反応だが、北朝鮮の脅威の本質を抑えれば、韓国にしか届かない短距離ミサイルは危険ではなくなるという思考なのだろう。
トランプ政権の日本人拉致事件の解決への協力姿勢はなお堅固にみえる。日本人拉致を北朝鮮の人権弾圧全体の重要部分に組み込んで解決を迫る構えを強め始めたことは歓迎すべきだ。
だがなお金正恩委員長が米側への約束を実行するか否か。予断を許さぬ緊迫が当面は続くといえよう。
(その3に続く。その1。全4回)
編集部註 この記事は古森義久氏が自由民主党の機関紙「自由民主」に依頼されて、掲載された寄稿論文の転載です。同論文は「不透明さを増す北東アジア情勢と日米関係」というタイトルで4回の連載となっています。今回の転載はそのうちの第2回目、「米国が迫る北朝鮮の大転換」という題の記事です。
トップ写真)金委員長とトランプ大統領
出典)Flickr; The White House
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