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私のパフォーマンス理論 vol.34 -筋力トレーニングについて-

Japan In-depth / 2019年9月11日 7時0分

さて肝心の種目はどのようなものを行なっていたか。陸上の特に短距離で重要な筋肉は、中臀筋、内転筋、腸腰筋群になる。短距離にとって股関節進展は重要で、それである程度スピードが決まると言ってもいい。ジャンプスクワットをワイドスタンスで行うもの、前後に足を開いてこれもジャンプで足を入れ替えるもの、サイドにジャンプをして片足で立つことを繰り返すものは私は多用していた。股関節進展×プライオメトリック的なものを好んで行なった。


それ以外には腹筋背筋にかなりの時間を割いた。腹筋は腹直筋を攻めたくなるが、私の感覚では、腸腰筋群、外腹斜筋、など体感を固定するような筋肉の方が重要だと考えていた。自分の胴体を帯のように巻いているあたりの筋肉を強くししなやかに固定するイメージだった。力の入れ方がわかってくるとほとんどのトレーニングで腹圧をかけることができるようになる。


筋力トレーニングで意識していたことは、早く動かすべき筋肉とそうではない筋肉を分けることだ。私のイメージでは一人の身体の中でも速筋的なものと遅筋的なものがあり、末端に近くなる程速筋的で、体感に近いほど遅筋的だと考えていた。だから手足では早い動きを意識することはあったが、体感部分を稼動する場合はゆっくりと確実に動かすことを考えていた。釣竿を前後に振ると末端は早くしなるが、手元はがっちりホールドされている、あのイメージに近い。


あとはよく使っていたのは、事前に使いたい筋肉に刺激が入るような筋力トレーニングを行い、その後競技の動きをするという練習をよく行なっていた。これの良い点は、走る行為は循環運動なので、右足を踏んでいるときは左足が上がっているなど、とにかく忙しいので意識をすることが最初は難しい。ところが、筋力トレーニングで事前に刺激を入れると、そこをいやがおうにも意識するので、狙ったところを使って走る感覚がつかみやすかった。


最後に後悔していることは、競技人生前半で股関節以外の末端部分は細ければ細いほどいいという考えを持っていたので、大腿四頭筋、特に内側広筋に刺激を入れることを嫌がった。年齢が高くなってくると着地の瞬間にすこし外側広筋優位に働くようになっていった。結果として膝に痛みが出て、徐々にトレーニングに支障をきたすようになっていった。筋力トレーニングは予防の側面もあり、それらは若い間には想像がつかないので、経験のあるトレーナーの助言などを踏まえながらバランスよく鍛えることを勧める。


(この記事は2019年8月27日に為末大HPに掲載されたものです)


トップ画像:Pixabay by Walter Röllin


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