コロンビア和平合意崩壊の恐れ
Japan In-depth / 2019年9月17日 18時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・コロンビア革命軍と政府軍間で武装闘争再開。
・背景にはドゥケ大統領のFARC弾圧。
・ベネズエラとコロンビアの軍事衝突に発展する可能性。
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南米コロンビアで3年前、当時の政府と左翼ゲリラとの都の間で成立した歴史的和平合意が崩壊する恐れが出ている。
■ 元ゲリア司令官が武装闘争再開を宣言
コロンビア最大の左翼ゲリラだった「コロンビア革命軍」(FARC)の元司令官イバン・マルケス氏が8月末、政府が和平合意を十分履行していないとして、同合意を破棄して武装闘争を再開すると宣言した。これに対しコロンビア政府軍は直ちに同国南部の元FARCメンバー潜伏地域で掃討作戦を開始した。
この出来事は日本ではほとんど報じられなかったが、中南米では多くのメディアが「コロンビア歴史的和平合意が危機に」(メキシコの有力テレビ)などとトップニュースで伝えた。
注目されるのは、武装闘争再開を宣言した元FARC司令官マルケス氏が同組織のかつてのナンバー2で、政府との和平交渉の責任者だった人物であること。「和平合意成立の立役者だったマルケス氏が合意破棄を宣言したことは、FARCの武装闘争復帰が単なる脅しではなく、再び本格的に闘争に入ることを意味する」(コロンビアの有力紙記者)と見る向きが多い。「元メンバーの大半は和平合意継続を支持し、社会復帰しており、武装闘争に復帰することはない」(元FARC幹部)との情報もある。しかし、コロンビアの現地メディアによれば、マルケス氏の武装闘争再開を支持する元FARCメンバーは2千5百人に上るという。
▲写真 元司令官イバン・マルケス氏(2016年)出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
■ 背景にコロンビア政府の強硬姿勢
武装闘争再開の動きの背景には、和平合意の実現に事実上反対するドゥケ政権の対応があるというのが、コロンビアの多くの政治アナリストの意見。2016年にコロンビア政府とFARCとの間で成立した和平合意は、半世紀以上に及ぶ同国内戦に終止符を打ち、対話による紛争収拾の新たなモデルとして国際社会から高い評価を受けた。当時のサントス・コロンビア大統領がノーベル平和賞を受賞したのも、そのためだ。
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