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北東アジア情勢は日米関係をどう変えるか その3 米中対決の深層~国際秩序と価値観戦い~

Japan In-depth / 2019年9月17日 23時0分

当初は貿易に限ったかにみえたトランプ政権の対中姿勢も政治や軍事、人権などへの非難へと広がっていった。基本的な価値観でも中国はアメリカの基本利益を侵害するという強固な対中認識が形成されていった。その結果が2017年12月の「国家安全保障戦略」であり、18年10月のペンス副大統領による新中国政策の発表だった。いずれの政策も中国はアメリカ主導の秩序を侵す存在だと定義づけていた。


アメリカの国政全体でも「米中経済安保調査委員会」というような議会主体の公的諮問機関が超党派で中国に関する調査を続けてきた。同委員会はこの9月4日に「米中関係のこの一年の総括」と題する公聴会を開いた。その公聴会の冒頭でクリーブランド副委員長が強調した。


「米中対立は東アジアのアメリカの同盟国や友好国にとってアメリカか中国かの選択ではない。市民の自由、人権と公正な規則に基づく貿易システムか、あるいは専制的な政治システムの自国中心の帝国主義的な経済野望か、の選択なのだ」



▲写真 ロビン・クリーブランド副委員長(2019年9月4日米中経済安保調査委員会公聴会)出典:U.S.-CHINA ECONOMIC and SECURITY REVIEW COMMISSION


トランプ政権の対中政策もこうした超党派の諮問機関からのインプットが大きいのだ。政府と議会の重層の対中認識の上に成り立つ部分が多いのである。だからトランプ政権は中国を基本的な価値観での挑戦者とみて、その南シナ海での無法な領土膨張、ウイグルでの民族弾圧、香港での民主活動の抑圧などを明確に非難するようになった。


だが反トランプの主要メディアは政権の対中政策についても大統領のツイッターと報道陣への即興の応答を皮相に伝えるだけで、政策の本体に触れることは少ない。しかしトランプ政権の方針にはほぼすべて反対する民主党は上院院内総務のチャック・シューマー議員を先頭に同政権の対中政策には支援どころか、もっと強硬にという叱咤を浴びせる。



▲写真 チャック・シューマー米民主党上院院内総務 出典:Charles E. SCHUMER(Public domain)


いまのアメリカの中国への強固な抑止の姿勢はこんご当面は変わらないとみるべきだろう。その結果の米中対立の激化では日本も両国の橋渡しを、というような非当事者の役を演じることは難しいのである。


(その4に続く。その1、その2。全4回)


 


編集部註:この記事は古森義久氏が自由民主党の機関紙「自由民主」に依頼されて、掲載された寄稿論文の転載です。同論文は「不透明さを増す北東アジア情勢と日米関係」というタイトルで4回の連載となっています。今回の転載はそのうちの第3回目、「米中対決の深層」という題の記事です。


トップ写真:G20大阪サミットに合わせて行われた米中首脳会談(2019年6月29日 大阪市)出典:THE STATE COUNCIL THE PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA


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