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空家対策、ランドバンクとは

Japan In-depth / 2019年9月20日 23時0分

こうした人に直接交渉するのは、NPO法人の理事長も務める山形第一不動産社長の渡辺秀賢だ。東京まで出向くこともある。


ただ、所有者と言ってもすでに、故人の場合や、所有権が細分化されていることもある。そこで出番になるのは、司法書士だ。複雑な権利関係を整理する。それでは、具体的にどのような空き家が対象となるのか。


仙台市に住む60代の会社員Aさんは10年前に、母親から家屋を引き継いだ。悩みの種は、管理費だ。住んでいないのに、水道管が破裂すれば、出費となる。いっそのこと、売却したり、賃貸のアパートを建てようとするが、それもままならない。奥まったところにあるため、解体のための重機も入らない。そもそも現状では、道路に面してないため、建築基準法上、解体しても、建て替えることができない。


Aさんの家屋は、道路に面していない。同じ区画のほかの2つの空き家も同様だ。道路側には、居住中の2軒の家と、駐車場がある。NPO法人は、3軒の空き家と駐車場の所有者と交渉する。



▲写真 山形県上山市のAさんの空き家 提供:上山市



▲図 現状のイメージ図 提供:上山市


そして、新たに引き込み道路をつくる予定だ。その結果、Aさん含め2軒の空き家は、建て替えが可能となる。つまり、土地の価値が上がり、宅地として売却できる。もう一軒の空き家は店舗になり、道路に面した駐車場を備える。



▲図 整備後のイメージ図 提供:上山市


ランドバンクとは別に、上山市は「住み替えバンク事業」を始めた。それは、高齢者と子育て世帯を結びつける事業だ。仕組みはこうなる。まず、1人暮らしの高齢者が自宅を市に登録し、インターネット上に公開する。一方、子育て世代がそれを閲覧できるようにする。


登録した後、実際に売却するまで一定期間がある。高齢者施設への入所などを検討している高齢者はその間、家財道具などを処分する。


「愛着のある家を空き家にしたくない」。「空き家になれば、迷惑がかかる」。「売却相手が見つからないと、家財道具の処分などが進められない」。そんな高齢者の声を踏まえたものだという。鏡は「高齢者と子育て世代、それぞれのニーズに合わせた。空き家となるのを未然に防止できる」と話している。


上山市は空き家問題に対して次から次へと対策を打ち出す。その仕掛け人、鏡の話を聞きながら、私は改めて、問題意識を持った公務員の重要性を痛感した。


「どげんかせんといかん」。その問題意識から、解決策は始まる。(敬称略)


トップ写真:山形県上山市のAさんの空き家 提供:上山市


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