国連、難民問題でスー・チー氏に解決求める
Japan In-depth / 2019年9月21日 11時0分
9月18日にミャンマーのチュー・モー・トゥン国連大使は米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」に対して「国連人権理事会や事実調査団の報告は軍への批判に満ちた一方的なものである」との見解を示し、軍のゾー・ミン・トゥン報道官も「国連の主張は不当である。国連などの調査は外部から調査して結論を導きだしており、一方の側に偏った結果である」と反論した。
その上で軍は独自の調査で国連や国際社会が指摘する人権問題などへの調査にも取り組んでいると強調している。
■ ロヒンギャ族に加えヒンズー教徒も受難
9月17日には主要都市ヤンゴンの一角でヒンズー教徒らによる「慰霊祭」が行われた。これは2017年8月下旬にラカイン州マウンドーでイスラム教徒であるロヒンギャ族の武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」がヒンズー教徒の住民約100人を虐殺し、集団墓地に埋めた悲劇で犠牲になった人々を追悼するもので、ヒンズー教徒らが参列した。
ミャンマーではロヒンギャ族に対するミャンマー軍の人権侵害、民族浄化などが国際的には大きく報道されているが、実はロヒンギャ族の武装組織ARSA(ミャンマー政府はテロ組織としている)による同じ少数派のヒンズー教徒への襲撃、人感侵害に加えて多数派仏教徒の武装組織と軍の衝突なども発生しているなど複雑な情勢下にあるのが現状だ。
特にラカイン州の仏教徒は「アラカン軍(AA)」という武装過激集団を組織して2019年初めから軍と激しい戦闘を続けており、同州の治安は極めて不安定となっている。
▲写真 マウンドーでパトロールしているミャンマー警察 出典:wikipedia; Steve Sandford
2017年8月の事件ではラカイン州のヒンズー教徒はARSAによる襲撃を受け、男性は虐殺され、女性はイスラム教徒への改宗を強制された後、バングラデシュのロヒンギャ族難民キャンプに組織的に送りこまれている、という人権団体の報告もあるようにヒンズー教徒の人々は極めて厳しい状況に直面している。
こうした複雑な状況に対してミャンマー政府はほとんど有効な対応策を取らず、国連によるとバングラデシュに避難している難民の帰還事業は「安全が確保されない」とのロヒンギャ族難民の懸念から帰国希望者が少なく事実上頓挫している。
さらに国連人権理事会の報告などでは「依然としてミャンマー国内の残るロヒンギャ族も虐殺の危険に直面している」として現在もラカイン州を中心に軍によるロヒンギャ族への弾圧、そして武装組織であるARSAやAAとの戦闘が断続的に続いていることへの深い憂慮が示されている。
2015年の総選挙で圧勝したスー・チーさん率いる与党「国民民主連盟(NLD)」だが、多党化で支持の分散化が進む中、2018年に実施された補選では地方、国会でNLDが4議席を失うなど2020年に予定される次回総選挙での苦戦も予想されている。
そんな中で圧倒的多数の仏教徒と国会に一定議席を持ち政府ににらみを利かせている軍との間でスー・チーさんがどこまでロヒンギャ問題などの国内治安問題に指導力を発揮できるのか、改めて問われている。
トップ写真:バングラディッシュに逃れたロヒンギャ族 出典:Tasnim News Agency
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