北東アジア情勢は日米関係をどう変えるか その4 日米同盟の重み
Japan In-depth / 2019年9月24日 11時0分
しかし円滑に機能してきたようにみえる日米同盟に対して米側では実は年来の水面下での不満がある。だが当面は効果を発揮している枠組みだから、あえてその変更を日本側に求めることもないという自粛がこれまでの歴代政権の思考だった。だがその規範を破ったのがトランプ大統領だった。
「日米同盟では米国は日本が攻撃されれば、全力をあげて日本を支援するが、日本は米国が攻撃されてもなにもしないのは不公正だ」
同大統領はこんな簡略な表現で6月に複数回、日米同盟の片務性を批判した。日本側は官民ともにこの批判を軽視、あるいは無視する向きが多かった。だがこの対応は危険である。
▲写真 第53回自衛隊高級幹部会同に出席する安倍首相 出典:首相官邸Twitter
米国の対日同盟の片務性への不満はトランプ大統領に限らず、超党派であり、長い歴史もあるからだ。さらに有事や危機に際してのその片務性の露呈は米国民一般の対日同盟破棄の叫びを生みかねないのである。
日本は憲法9条の規定で集団的自衛権を普通には行使できない。自国領土の防衛を米国に委ねる一方、その米国が日本の至近距離で攻撃を受けても支援はできない。米国にとって全世界でも唯一の異端の同盟なのだ。同じアジア太平洋地区でも米国の韓国、フィリピン、オーストラリアなどとの二国間同盟はみな双務的である。
この3国とも米国が太平洋地域で他国から軍事攻撃を受けた場合、自国への攻撃に等しいとみなし、集団的自衛圏を発動して、米軍を支援し、ともに戦うことになっている。自国領土への攻撃でなければ、米国との共同行動をとれない日本とは決定的に異なるのだ。
日本は安倍政権の下、平和安保法を成立させ、有事に集団的自衛権を一部、行使できるようにした。だが実際の行使には厳しい条件がついており、双務的な一般の同盟関係とは違う。
だから米側では日本に憲法を改正し、集団的自衛権を解禁して、同盟を普通にすることを求める声が多いのである。
(了。全4回。その1、その2、その3)
編集部註:この記事は古森義久氏が自由民主党の機関紙「自由民主」に依頼されて、掲載された寄稿論文の転載です。同論文は「不透明さを増す北東アジア情勢と日米関係」というタイトルで4回の連載となっています。今回の転載はそのうちの第4回目の最終回、「日米同盟の重み」という題の記事です。
トップ写真:ジョナサン・グリナート少将(当時)訪日時 出典:Commander Naval Sea Systems Command
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