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次世代高専設立、神山町

Japan In-depth / 2019年9月25日 18時0分

また靴職人の移住者もいる。愛知県出身の男性は、ドイツで修業し、帰国後は神奈川県などで靴づくりをしていた。妻と一緒に神山町に移住したのは2015年1月だ。客が来店し、寸法をはかり、その人にあった靴づくりをする。遠方から来る人が、この店で靴を購入するためには、寸法を測る必要があり、1泊するケースも多い。「県外からもこの靴を求めて買いに来るお客さんもいます。そうなると、泊まったり、食べたりしてまたお金が落ちるのです」(大南)。



▲写真 靴屋 提供:筆者


それでは大南はどんな経歴なのか。アメリカの大学院を卒業後、地元に戻り、公共事業などを手掛ける家業の建設業を継いだ。「地域で産業らしい産業といえば、道路などの工事を請け負う建設業です。私自身も、そうです。私たちは、過疎を食い止めるために道路を作っていました。しかし、便利になると毎年引っ越す人が出てきて、結果的には過疎が進行していく」。こんな様子を見て、町づくりの旗振り役となった。


過疎化に対して危機感を抱いていた神山町役場も、大南の動きを支援した。その結果、神山町への移住者は220人以上に上る。神山町の人口は5300人ほどなので、全体の4%ほどが移住者になる。


大南は「創造的過疎」という概念を提唱する。それは、人口減の流れには無理に逆らわず、若者などを呼び込み、人口構成の健全化を図るものだ。農林業だけに頼らず、地域で多様な働き方ができるようにしたいという。「やったらええんちゃう」が口癖でとにかく行動を重視する。多少失敗しても軌道修正すればいいという考えなのだ。


私はふと駆け出し記者のころを思い出した。サントリーを取材していた際によく聞いた言葉「やってみなはれ」だ。創業者の鳥井信治郎の言葉である。まずは実行第一という考え方だ。誰もが不可能だと思われていた日本でのウイスキー事業も「やってみなはれ」スピリットがあったからだという。アメリカの巨大蒸留酒メーカーを買収し、世界のトップメーカーになろうとしているのも、創業者の魂がベースにあるという。


結局、企業経営も地域づくりも同じだと思う。前例がないことにおびえて、何も挑戦しないと、衰退する。とがったリーダーの情熱と行動こそが、変革を呼び起こす。神山町の成功体験はそれを物語る。大南の動きが火種となり、移住者殺到、さらには高専設立と次々に新たな展開を呼び起こす。「やってみなはれ」精神は、地方創生の要諦である。(敬称略)


トップ写真:サテライトオフィス。平成16年に四国で初めて全戸に光ファイバーを整備し、都会より快適にインターネットが利用できる。 提供:筆者


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