村上世彰「投資教育」の狙い
Japan In-depth / 2019年10月3日 21時14分
その上で、お金は貯めるものではなく、使うものだと強調。「お金がぐるぐる回るような感覚を中学生、高校生のころから持ってもらえると日本の経済も良くなる」と指摘した。
村上の指摘は、かねてから言われてきた日本経済の問題点だ。貯蓄を美徳とし、お金を使わないことが日本経済の足を引っ張っている。経済全体を冷静に分析すれば、その通りだろう。
ただ、村上が投資教育のこだわるのは、特別な理由がある。きっかけは、2006年にニッポン放送株の売買を巡ってインサイダー取引で逮捕されことだ。逮捕当時の会見はあまりに有名だ。
「お金儲けは悪いことですか」。村上は、強烈な批判を食らう。もうけすぎで世間にたたかれた。平成の経済史を彩る大きなニュースとなった。
村上は当時を振り返る。「『安く買って高く売るのはおぞましい』という表現の判決が出た。すごくショックを受けた。そういう国の感覚自体を変えなければいけない。お金は汚いものではない、稼ぐのは悪いことではない。子どもたちにそれを伝えたい」。
こうした投資教育を広めるため、村上が力を入れるのは本の出版だ。「生涯投資家」を皮切りに、子ども向けの本を含めて次々に本を出した。「投資教育の教科書」にしたい考えだ。
そもそも村上が投資を始めたのは、投資家でもあった父親の影響だ。
村上は、小学校3年生の時に父親から10年分のお小遣いを一括でもらった。その額は、100万円だ。それで最初に買ったのは、サッポロビールの株だった。理由は単純だ。当時、父親が好んで飲んでいた。村上はそれから投資家としての本能が目覚めた。毎日、新聞で株価をチェックし、経済面の記事も読むようになった。それが原点となり、世の中の動きを学べたという。
村上と言う強烈な個性が打ち上げる「投資教育」には懸念の声もあろう。日本では依然として投資に関しては嫌悪感を抱く人は少なくないからだ。しかし、投資をしなければ、お金は回らず、新たな企業が生まれないといのは事実だ。日本がもたもたしている間に、アメリカではGAFA、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといった巨大企業が生まれている。
「貯蓄から投資へ」。使い古された言葉をもう一度、思い起こしたい。
【下記の通り訂正いたしました。(2019年10月4日10:00)】
誤:元投資ファンド村上世彰氏はシンガポールで「投資」の授業を行う。
正:元投資ファンド村上世彰氏は「投資」の授業を行う。
トップ写真:「投資教育」の教壇に立つ村上氏 出典:著者提供
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