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私のパフォーマンス理論 vol.38 - 目標設定-

Japan In-depth / 2019年10月10日 11時31分

一方の願望としての目標は、ほとんど達成されることがない。例えばチームスポーツで世界一やベスト4を目指すと言っていても過去あまり達成されたことがない。この場合、原因を仮に探してみても、そもそもの目標が高すぎたからということにしかならない。このような目標は、自らを鼓舞し指針表明をするのが主な目的なので、厳密に戦略を立ててそれを達成する想定でいるという性質のものではない。もちろん高めの目標が達成されるということがモチベーションにも技術にもばらつきがある若年層では時々起こる。このような奇跡の物語は人を感動させるので社会全般で好まれるが、毎回起きると思わない方がいい。


願望と具体的目標の違いを分かってやっていれば(つまり願望の目標をいいながら実際の戦略や戦術は具体的な低めの目標に照準を合わせている)問題は起きないが、願望としての目標と具体的な目標の違いがわからなくなると、大変な歪みが生じることになる。まず戦略は現在持っているリソースと敵を分析した上で生まれるものだが、願望としての目標は現状から出発していないので、辻褄が合っていない。辻褄が合っていないのに戦略を立てれば当然たくさん矛盾が生まれる。この足りないを何かで埋めなければならない。多くの場合、この足りないリソースを”気持ち”や”精神”のような測定不可能なもので埋めてしまう。


次第に、戦略が破綻していることにチームが慣れていくと、本当のことよりも信じたいことを重要視していくので、都合の悪い情報を敬遠し始める。そして、情報収集も、本質的な議論も行われなくなっていく。私は日本的根性論とは、この願望と現実が混ざってしまい、ふわっとした聴き心地のいい議論と最後は気持ちと精神で濁す文化のことだと思っている。


さて、目標設定と言うと必ず計画という話が出てくるが、計画を詳細に決めることが良いとも限らない。私自身がこのタイプで、長期ではぼんやりと世界の三番以内を目指しながら、シーズンオフに決めた計画はあるもののあまりそれにこだわらず、毎日思いついたことの試行錯誤の繰り返しで進めていた。このような選手は計画がないので長期的視点が欠如しがちだが、一方でいろんなことを実験するので偶然の出会いがおきやすくクリエイティビティが刺激されやすい。もし文章を書く時に章立てではなくいきなり描き始めて最後に整理するタイプであれば私と似ている可能性が高い。このような選手はきっちりした計画を立て過ぎないで、大きな方向性を決め、そこに向けて日々の目標と実験と内省を高速回転させるスタイルの方が向いていると思う。中期目標がなく、長期目標と、極めて短期の目標だけで進めていくスタイルだ。


良い目標はちょうど良い距離感で引っ張る磁石に似ている。引き寄せられるようにそこに向かう力を生み出してくれる。遠過ぎれば磁力が及ばないし、近過ぎればすぐ達成され能力がストレッチされない。そして何より目標という磁石が置かれる場所は、目指すべき勝利条件との間でなければならない。


 

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