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「表現の不自由展」米のケース

Japan In-depth / 2019年10月18日 23時0分


▲写真 大村秀章・愛知県知事がツイッターに載せた津田大介氏との写真。(現在は削除されている)出典:大村秀章知事ツイッター


政治性と宗教性という点で違いはあるが、アメリカでも1999年、「センセーション」と題したブルックリン美術館の特別展示が一大騒動を巻き起こした。


問題の作品はイギリスの黒人画家クリス・オフィリ(Chris Ofili)の「聖処女マリア」で、デフォルメされた黒人女性の乳房のコラージュ(貼付)部分と台座に象の糞が使われていた。また画面に多数飛ぶ蝶のような物体が、近づいて見ると、突き出した女性のヒップの写真であった。



▲写真 ブルックリン美術館(ニューヨーク)出典:Wikimedia Commons; PaladinHero1


経緯は後述するが、同作品は現在ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されており、「MoMA, Ofili, Mary」で検索すると同美術館の説明入りで画像が見られる。


「センセーション」展を開催したブルックリン美術館は、ニューヨーク市の財政補助を受け、市所有の建物に入居している。当時のルドルフ・ジュリアーニ市長(現在トランプ大統領の私的法律顧問)は、「嫌悪すべき企画に表現の自由は適用されない」と、作品を撤去しなければ助成金を打ち切り、美術館自体の建物からの立ち退きも求めるとの姿勢を打ち出す。事態は法廷で争われるに至ったが、特別展示終了で作品が建物外に搬出されたこともあり、結局、市側は美術館に対する立ち退き要求を取り下げた。



▲写真 ニューヨーク市長だったルドルフ・ジュリアーニ氏 出典:Public domain


その後この作品は、460万ドル(約5億円)である富豪が落札し、昨年(2018年)ニューヨーク近代美術館に寄贈された。ところがその際は騒動とならなかった。最大の理由は、同美術館はロックフェラー財団など民間資金で運営されており、税金が入っていないことにある。



▲写真 クリス・オフィリの「聖処女マリア」が寄贈されたニューヨーク近代美術館 出典: Flickr; t-mizo


日本でも同様、個人美術館や朝日新聞あたりが「表現の不自由展」を引き取り、自らの費用と責任で展示する覚悟を示せばよいのである。


またオフィリの作品には、題名以外に聖母マリアを思わせる要素は乏しく、構図や色彩にアートとしての面白さを感じる人々が少なくない。象の糞も彼が好んで使う画材で特に冒涜の意図はなかったとされる。


もっともアメリカでも、例えばマーティン・ルーサー・キングの写真を焼いて踏みにじる映像を展示したなら、主催者は囂々たる非難と資金引き上げ、訴訟に見舞われるだろう。その点は、日本より遙かに厳しいはずだ。


トップ画像:あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」再開プロジェクトの版画(いちむらみさこ氏作)出典:表現の不自由展 facebook


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