信用を無残に砕いた関西電力
Japan In-depth / 2019年10月26日 18時42分
■ 恐くて返却できず?
一連の関電トップらの発言で目立つのは、恐喝的発言が恐くて誰も面と向かって助役に対応しなかった。にも拘わらず会社役員が一体となって対策を論じ合った形跡がなく警察などに相談することもしていなかった。ひたすら20人の役員が個々に戦々恐々としながら誰にもいわず嵐が通り過ぎるのを待っていたかのようだ。しかもその間に役員の中には一部の金品を使ったり、“いつか返そうと思って預かっていたつもりだった”と弁明するのだから話にならならない。
また、助役の機嫌を損ねると原発の再稼動が出来なくなる――ことなどを考え、強く拒めなかったとも弁明している。住民の安全、消費者の利益などを第一に考えるべき原発企業が、ヤクザでもない町の助役に巨大企業のトップ達が恐れた理由がもう一つ判然としない。まだ他にも隠されている理由があるのだろうか。企業の責任者としての凜とした姿勢がまるで見られず、20人もの幹部が誰一人としてモノを申せない企業体質、コンプライアンスは一体どうなっていたのか考え込まざるを得ない。実は元助役の資金は関電から過去に約20億円超の工事を受注していた関連企業から出ていたようで、いわば工事受注の見返りに元助役を通じて資金を配っていた構図だ。
▲写真 高浜発電所(関西電力、福井県大飯郡高浜町)出典:Wikikmedia Commons; Hirorinmasa
■ 進退については口を閉ざす
関電の会長、社長は事件の経緯について資料を見ながら淡々と説明していたが、経営責任については、会見中は「今後二度とこうしたことがおきないよう対策を練って行く事が責任と考える」と最近の経営者の常套句を口にするだけだった。後に会長は責任を感じて10月9日に退任したが、社長は事件の総括が終わるまで社長職に留まると述べている。
関西電力といえば、関西では1、2を争う大企業で関西の雄であり、企業管理、ガバナンスもしっかりしているとみられていた。それだけに不思議に思うのは、20人ものトップが扱いに困る金品を受け取りながら、企業として役員間で話し合いがまるでなく、管理や返却行為などについては個々のトップに委ねられたままで、企業全体としての危機感をまるで感じとっていなかったことだ。また元助役は関連企業の顧問などの役職についていたようだが、町の実力者とはいえ、そんなに“恐い”存在だったのか、警察や弁護士と相談する知恵はなかったのか、調査は過去7年分に限られていたようだが、それ以前の調査はしなくても良かったのか――など、まだまだ疑問は湧いてくる。
■ 株主代表訴訟へ発展か
筆頭株主の大阪市は、株主代表訴訟も考えているというが、原発の扱いを今後きちんとさせるためにも当然だろう。時を同じくして東京電力は危険な津波を予測していたにも拘わらず裁判では無罪となった。福島第一原発の事故対策には今後数十年の月日と莫大な資金を要することがわかっている。
資源のない日本は電力のためにあえて危険とみられる原発建設に手を染めてきただけに原発に対しては国民も企業も神経過敏となるほど気を遣ってきたはずだが、日が経つと徐々に注意が薄らいでくるのだろう。実を言えばわたしも電力会社と何度か話し合いを行なう接待を受けたこともある。最近の一連の事件を知るにつけ忸怩たる思いに駆られる。
トップ写真:関西電力堺港発電所 出典:Wikimedia Commons; KishujiRapid
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