1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

まさかの北アイルランド切り捨て ブレグジットという迷宮 その1

Japan In-depth / 2019年10月27日 22時1分

実際、米国の有名な投資会社ゴールドマン・サックスや『フィナンシャル・タイムズ』など英国の経済紙は、英国経済の先行きについて悲観的な見通しを開陳している。


前にも述べた通り、現在の英国下院において保守党は与党ながら過半数を割り込んでおり、法案を通過させるには、20票ほどの賛成票の上積みが必要であった。


ジョンソン首相としては、ここで民主統一党(10議席)を切り捨ても、労働党内にも「隠れ離脱支持派」がおり、無所属議員の中には、やはり「決められない政治」に辟易して、ともかくも合意なき離脱が避けられたのだから……と考える者が一人や二人ではないはずなので、僅差でも可決の持ち込める、と踏んだらしい。


労働党のコービン党首も、「(新たな離脱案は)否決されるだろうが、かなりの僅差になるだろう」と予測を語っていた。私など、「五分五分よりもやや高い確率で、離脱撤回・ジョンソン辞任となるのではないか」という予測を開陳していたので、正直ハラハラしながら続報を待ったものである。


そして10月19日、土曜日に議会が招集された。土曜日の招集とは、アルゼンチンとの間でフォークランド紛争が勃発した1982年以来37年ぶりで、日程的にも異例だが、ジョンソン首相としては、どうしてもこの日までに新たな離脱案を批准させなければならなかったのだ。


しかし、待っていたのは野党のペナルティーキックであった。すでに日本でも大きく報じられた通り、関連法案を先に整備するという野党の動議が、賛成322・反対306という僅差ながら可決されたのである。


すでに9月に可決された法案により、19日までに離脱案が議会で承認されない場合は、首相はEUに対して離脱の延期を求める義務を負う、とされていた。これが、土曜日にもわざわざ議会が招集された理由であったことは言うまでもない。


野党、とりわけ労働党としては、(否決して政権の求心力を一挙に失わせることができれば理想的だが、票読みは微妙なところだ)という読みがあったものと、英国の政治ジャーナリストたちは見ている。当然ながら


「これでは単なる審議妨害ではないか」という批判も巻き起こった。



▲画像 ボリス・ジョンソン首相 出典:flickr by EU2017EE Estonian President


しかしながら、9月段階で、強権を発動して議会を休会させ、ブレグジットを強引に進めようとしたのは首相の方である。これはただちに法廷闘争に持ち込まれ、「議会制民主主義の原則に反する」との判決が下された。日本のマスコミでは「違憲判決」と書かれたりしたが、英国には成文憲法はなく、判例の蓄積がそのまま法律として機能するシステムだ。


こうして再開された議会において、早速可決されたのが、前述の「10月19日までに議会の承認が得られなければ……」という法案であった。


ジョンソン首相は「法には従う」と繰り返し明言して、その言葉通り19日にはEU議長宛に離脱の延期を要請する書簡を送ったが、そこに首相の署名はなく、また、自分としては延期は望んでいない、との書簡も同時に送付されたという。


とどのつまり、今や英国議会においては、与野党ともに、「本音と建て前は違いますよ」ということを隠そうともしないまま、国運を左右する大問題についての「論争」を続けているのである、こんなことで、よいはずがないのだが。


(その2に続く)


トップ画像:pixabay by stux


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください