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「地域に飛び出す公務員」地域活性化センター理事長椎川忍氏(上)

Japan In-depth / 2019年10月28日 11時0分

今の日本は成熟社会に入っており、高い成長を実現するのは困難だ。そうした環境の下では、法律とか国の制度だけでは、人々を救えない。困りごとを助ける仕組みが必要になっている。親の介護が必要な家もあれば、子供の引きこもりで悩むケース、さらには、多重債務で苦しむ人・・・。地域にはさまざまな困りごとで悩む人がいるが、縦割りの役所では住民の困りごとを救うのは難しい。だからこそ、公務員は地域をもっと知るべきだ。役所の外にもっと飛び出せ。椎川はそう発破をかける。現場主義者のそんな思いは、一つの大きな潮流をつくった。


それが2008年10月に発足した「地域に飛び出す公務員」というネットワークである。通称「飛び公(とびこう)」だ。総務省の官僚だった時代に、音頭をとった。役所の仕事以外に、PTA、自治会、消防団どんな活動でもいい。さまざまな地域の活動をやっていこう。そんな趣旨だ。それは全国に拡大している。今ではメーリングリストで情報交換する公務員は2500人に上る。


きっかけとなったのは、20数年前の経験だ。椎川は島根県で総務部長として勤務していた。島根県は東西に長く、面積が広い。そのため、県庁から離れた地域に「出前県庁」と称して、住民懇談会などを開催した。こうした現場で見聞きしたことが、椎川の脳裏にこびりついた。「市町村の職員である以前に、地域住民ではないだろうか」。


縦割り行政では見えない現場の問題点がある。それを行政に生かそうという試みである。「公務員は狭い世界に閉じこもってはいけない。広く、世間の人々と交わることによって、知恵と工夫、イノベーションが生まれる。『公務員の常識は社会の非常識だ』。しかし、公務員が地域に飛び出せば、状況が変わる」。椎川はこんな主張を繰り返す。


ただ、古いタイプの公務員に手厳しい。「住民の生の声を踏まえず、国が作った既存の法令や制度を忠実に運用する。それで仕事をした気持ちになっている。また、公平・公正という建前にしばられすぎては駄目だ。自助努力して頑張っている住民を支援しようとしない。依存心ばかり強い人たちと同列にするのはおかしい」。


「飛び公(とびこう)」創設に動いた椎川だが、公務員が自由に動くには、役所全体の風土改革が必要だ。それにはトップである首長の理解は欠かせない。


2011年には旧知の首長などにも働きかけ、「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合」の設立にこぎつけた。年1回、首長連合サミットを開催している。椎川は「飛び公」の提唱者として毎年顔を出す。



▲写真 「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合サミット ©出町譲


異能の元官僚、椎川の仕事として私がもう一つ括目するのは、「地域おこし協力隊」だ。「生みの親」となったきっかけはいったい何なのか。


(後編へつづく。)


トップ画像: pxabay by PublicDomainPictures


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