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「日本の風土、再認識を」地域活性化センター理事長椎川忍氏(下)

Japan In-depth / 2019年10月28日 11時0分

地域おこし協力隊は急ピッチで拡大しているが、草創期に椎川にとっては忘れられない人物がいる。俳優の故菅原文太だ。菅原は本格的に農業をやりたいと考えていた。その時、山梨県知事の横内正明が「山梨県で農業をやらないか」と誘ってきた。


菅原はその事情を旧知の椎川に相談した。椎川はさっそく菅原と一緒に横内の知事室を訪ねた。どこが農場に向いているか。菅原と椎川は県の担当者と一緒に、県内のいくつかの候補地を訪れた。


最も誘致に熱心だったのは、北杜市だった。市長の白倉政司も自ら案内した。その結果、菅原は2009年、北杜市に農園を開設した。山梨県も菅原文太に報いた。その農園に、「地域おこし協力隊」のメンバーを送り込んだのだ。「地域おこし協力隊」に手を挙げるのは市町村ばかりで、都道府県レベルは、山梨県が初めてだった。その意味で、県は大きな決断をした。


菅原は「地域おこし協力隊」のメンバーと一緒に有機農法にこだわった。山梨県はこうした動きを契機に「やまなし発!有機・自然共生農業を考えるつどい」を開催した。


人材育成に力を入れる椎川は、日本の風土を再認識する国民運動を仕掛けるべきだと強調する。「グローバル経済になって、地方は疲弊している。弱者救済という意識で、地方活性化を図ってもダメだ。明治維新以降、日本は、欧米に追い付き追い越せとまい進してきた。しかし、その一方で日本の良さを失いつつある。これからは、これまで軽視された日本の良さを取り戻し、自信を持つべきだ。モノづくりや人のために尽くす。そんな日本人のDNAは世界でも傑出している。国民の意識を変える国民運動を行うべきだ」。


さらに、自立の精神については江戸時代を学ぶべきだと主張する。


「人材が一番大切であることを理解してどこも藩校をつくって人材育成をし、風土に見合った特産品開発をして藩の財政を立て直そうと努力した。幕府は諸藩からお金を取り上げることはあっても面倒をみることはなかった。いま、地方自治体や地域はその爪の垢でも煎じて飲むべき」。


私は椎川と同じ時期に、時事通信の島根県庁担当記者だった。それ以来、20数年付き合っている。確かに、椎川は県内の市町村を歩き回っていたのを記憶している。椎川と話していると、「現場に解あり」と痛感する。島根での赴任が“種”となった「地域に飛び出す公務員」と「地域おこし協力隊」。この2つの仕事は恐らく、県庁の中にいるだけでは決して生まれない。現場に出向いて問題点を吸い上げたからこそ、実現したと思う。


私は若き官僚に言いたい。「役所から飛び出せ」。地方消滅を防ぐ手立ては、その行動にかかっている。


(了。上はこちら。全2回)


トップ画像:pixabay by JordyMeow


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