日本の大失敗 対中関与政策再び?
Japan In-depth / 2019年11月1日 23時0分
▲写真 南シナ海で演習する中国海軍
出典: 中国海軍ホームページ
一方、日本も実は中国に対しては関与政策を近年まで一貫して続けてきた。中国をより豊かに、より強くすれば、日本に対しては友好的に、国際的にも平和的に、そして国内では民主的になるだろう、という期待に基づく関与だった。
日本の対中政策の関与の最も濃縮された部分は中国への巨額な経済援助だった。日本の政府から中国の政府への40年に及ぶ合計4兆円近いODA(政府開発援助)だった。こんな政策はアメリカでも取らなかった。アメリカは共産主義国への自国政府の援助は禁止していたのだ。
だが日本からはODAの資金が毎年、湯水のように中国に与えられた。その巨額の資金は貧しい時代の中国の国家経済開発に投入された。道路、鉄道、港湾、空港、地下鉄、発電所、鉄鋼所など強国になるためのインフラの建設に日本国民の税金からの資金が注ぎこまれたのだ。インフラ施設の建設は中国の軍事力の増強にも大きく貢献する結果となった。
この対中ODA供与という外交政策は日本の戦後の外交全体を通じても最も異色、最も巨額の一大プロジェクトだった。中国の改革・開放に合わせて1979年から2018年まで約40年も対中ODAは続いた。
その総括はどうだったのか。
大失敗だったのである。
中国へのODAは中国の富国強兵政策に大きく貢献し、日本にとっての脅威となる中国の軍事力を強めた。中国は日本への友好的な政策はまったくとらず、日本を敵視し、しかも日本領土の尖閣諸島までを軍事力で奪おうとする姿勢を保つようになった。中国の国内での民主主義抑圧はさらに激しくなった。
日本側がODAの供与で願った目的とは正反対の現象が起きたのだ。日本としては自分に襲いかかるモンスターに餌を与えて、脅威を増してしまったといえる。これが日本の長年の対中関与政策だった。私はこの実態を『ODA幻想 対中国政策の大失態』という本にまとめて総括した。自分自身が中国に2年間、駐在しての取材結果を起点とする報告である。
▲「ODA幻想 対中国政策の大失態」(古森義久著 海竜社)
歴史は繰り返されるのか。
いまの安倍政権の対中政策をみていると、また過去の定型に似た関与の方向へと戻り始めたようである。アメリカからも、他の多数の諸国からも人権弾圧の象徴のように糾弾される習近平国家主席を2020年に国賓として招くということ自体が安倍政権の中国への関与どころか、融和、迎合として映る。トランプ政権の対中政策とは正反対にみえる。
今後、トランプ政権が安倍政権に対して、この種の対中関与政策を止めて、アメリカの対中抑止政策に同調することを迫ってきた場合、どうするのか。
日米同盟の根幹にさえかかわる日米両国間の離反さえ起きかねない危険な事態も予想されるのだ。
トップ写真:日中首脳会談(2019年6月27日 大阪市)
出典: 首相官邸ホームページ
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