定期テスト廃止した公立中学(上)
Japan In-depth / 2019年11月4日 23時0分
▲写真 工藤勇一校長 提供:筆者
定期テストをなくした理由の一つは、一夜漬けの勉強の弊害だ。試験が終われば、すぐに忘れてしまうリスクもある。この時の点数は生徒にとって「瞬間最大風速」であり、それで成績をつけるは適切ではない。それが工藤の主張だ。
「子どもたちが何度でもテストを受けられたら、はやく記憶できた子でなくても、同じ結果が出るかもしれない。別に早い遅いというのは、関係がありません。ここで区切って、ここまでの記憶力を成績とするという方法ではなく、もっと細かく、複数回チャンスがあった方が、子どもがもっと自分で勉強したくなると思ったのです」。
麹町中学では、子どもたちが希望すれば、再び単元テストを受けるチャンスがある。60点だったら、子どもたちは分からなかった40点分を調べ直す。点数が上がれば、成績もアップする。その再チャレンジのための努力こそが大事だと、工藤は説く。
「参考書で調べる、先生に聞く、親に聞く、友達に聞く。分からないことを分かるようになるためには、自分で動かなければならない。これは、自分の人生のスタイルになる。この経験を積み重ねれば、問題を解決するときに、自分の力だけでなく、動くようになる」。
工藤の話を聞いて、私は膝を打った。これはまさに記者の取材と同じだ。事件が起きる。犯人はどうして犯行に及んだのか。犯人を知る人に一人ひとりに取材し、犯人像に迫る。現場に飛び出し、直接話を聞くことが不可欠である。
宿題をなくしたのも、定期テストを廃止したのと同じ意味だ。「『分からないもの』を『分かる』ようにするのが、勉強です。その意味では、宿題は真逆です。分かることも出しているのです。宿題が山ほど出されれば、勉強時間が2時間で済んだのに4時間必要になるのです」
宿題は分かる子どもにとっては、時間の無駄である。一方、分からない子供にとっては、苦痛になる。工藤はそんな主張を繰り返す。それでは、こうした工藤のやり方に生徒はどう感じているのか。ある生徒は語る。
「定期テストだと範囲が広くて勉強するのも大変で点数をあまり取れなかった。でも2年になって単元テストに変わったことで、範囲が狭いのでそれについて集中して勉強できる。点数も上がったし、成績も上がったのでよかった」。テストを細かく切り分けるのは、生徒の理解向上に一役買っているようだ。麹町中の改革はそれだけにとどまらない。(敬称略)
(下につづく。全2回。)
トップ写真:工藤勇一校長と筆者 提供:筆者
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