フィリピン麻薬問題担当副大統領解任
Japan In-depth / 2019年11月29日 23時0分
協議の具体的な内容は明らかになっていないが「米側はフィリピンの友好国として可能な限り協力する姿勢を示してくれた」(ロブレド副大統領)と述べ、今後の麻薬対策に期待をもたせた。
このように好調な滑り出しを見せていたロブレド副大統領による麻薬対策だが、11月24日に大統領府のサルバドール・パネロ報道官が声明を発表し、ドゥテルテ大統領によるロブレド副大統領のICAD共同議長解任を発表したのだ。
声明の中でパネロ報道官は「もし真剣にロブレド副大統領が麻薬問題と取り組もうとするなら米政府や国連関係者と協議を重ねるより、麻薬問題の犠牲者やその家族など草の根の人々と接することが必要だ」「(ICAD共同議長への)指名を受けて2週間以上経過したが、ロブレド副大統領は自分の進めたい麻薬対策の構想を提案しなかった。大統領は我慢してきた」「麻薬との闘いでは1日の遅れが国民の命を危険にさらす」などと説明している。
しかしロブレド副大統領はICAD共同議長就任後、ケソンシティーの麻薬患者リハビリセンターやバターンにある麻薬常習者のための施設、さらに麻薬対策に取り組む医療施設、麻薬犯罪が蔓延しているとされる一般の市場3カ所などを精力的に訪問するなど「草の根の状況」を把握する努力も行っていた。
▲写真 サルバドール・パネロ報道官とドゥテルテ大統領 出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
■ 精力的活動が大統領の逆鱗に触れた?
こうしたロブレド副大統領の精力的な動きが逆にドゥテルテ大統領の怒りに触れ、解任に追い込まれた可能性も浮上している。
ロブレド副大統領がUNODCの代表と会合をもった後の16日にドゥテルテ大統領は「機密を漏らしたら解任だ」と釘をさし、19日には会見で「(副大統領と自分は)対立する立場にあることに加え、よく彼女のことを知らずまた信頼できない」とまで言い切っており、国際社会をも含めたロブレド副大統領の精力的な活動が予想以上の反響を得て期待が高まったことに大統領が怒りをつのらせていたとの見方が強く、遠からずの解任は不可避だったとの見方が支配的だ。
そこで疑問となるのは「ではなぜそんなロブレド副大統領をICAD共同議長に起用したか」ということであるが、ICAD共同議長就任でロブレド副大統領が批判している麻薬対策の実状を知る機会を与えて、少しでもその急先鋒の姿勢を和らげようとの狙いがあったともいわれている。
さらにはパネロ報道官が解任理由の中で「UNODC代表との会合でロブレド副大統領はフィリピンに恥をかかせた」とも言及していることから、国連関係者らに超法規的措置に関する詳細な内情を報告し、それが「フィリピンの恥部」に当たることで不要なことだったとして、このままではドゥテルテ政権の足元が揺らぐ可能性もある、との判断から早期解任に動いたとの観測もでている。
いずれにしろ、フィリピンの麻薬問題は依然として最大の国内課題の一つであり、その解決策は政権の急務であることには変わりないものの、その方法論を巡る複雑な事情や思惑が今回のロブレド副大統領解任劇の背景には隠されているのは確実で、今後の動向が大いに注目される状況となっている。
トップ写真:握手をするロブレド副大統領とドゥテルテ大統領(2016年)出典:republic of philippines
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