フィリピン、戒厳令を解除へ
Japan In-depth / 2019年12月9日 18時0分
■ 賛否両論の中で治安当局が情勢判断
ドゥテルテ大統領は2019年7月に「戒厳令の延長か解除かは地元の要望次第、地元が望むなら延長もありうる」との姿勢を明らかにしていた。
ミンダナオ島最大の都市ダバオのサラ・ドゥテルテ市長(ドゥテルテ大統領の娘)などからは「戒厳令があるため地元の治安は安定している。そのため解除あるいは一部解除で投資を呼び込みたい」との意見が出ていた。
その一方で国家安全保障アドバイザーのヘルモン・エスペロン氏の「テロとの戦いのためにも戒厳令延長は必要であり、延長を大統領に進言する」と地元紙に語るなどの延長論も根強かった。
■ 治安当局が相次ぎ解除方針表明
こうした中、デルフィン・ロレンザーナ国防相が12月4日に声明を出して「大統領に戒厳令解除を進言したい」との姿勢を明らかにした。国家警察も同様の見解を示しており、軍と警察がともに延長しない方向を打ち出したことを内務自治省も受けいれることになり、戒厳令の年末解除の可能性が一層たかまり、あとはドゥテルテ大統領の最終的な判断を待つばかりとなっている。
▲写真 デルフィン・ロレンザーナ 出典:Wikimedia Commons
ロレンザーナ国防相によると「テロ組織は(マラウィ市占拠などのような)都市の武装占拠というようなテロをもはや実行する能力をもっていない。戒厳令の目的は達成されたと判断できるほどミンダナオ島の治安状況は改善している」との見方を示した。
フィリピンでは1月にホロ島でキリスト教会がインドネシア人夫妻のテロリストによる自爆テロで襲われ、23人が死亡しているがそれ以降大きなテロ事件は起きていない。
むしろテロとの戦いはインドネシア人テロリストが自爆テロを起こしたように海外からフィリピンに密入国してテロを起こすようなケースへの対処に移ってきているといえる。
このためフィリピン当局はマレーシアやインドネシアの空軍、海軍さらに海上保安組織などと連携してテロリストの流入、逃走を共同で警戒監視、摘発する態勢を現在も継続している。
■ 中間選挙の勝利で政権基盤盤石に
フィリピンではドゥテルテ大統領の2022年までの大統領任期の折り返しとなる今年5月の中間選挙(国政・地方選)でドゥテルテ大統領支持勢力が勝利をおさめた。
▲写真 ロドリゴ・ドゥテルテ 出典:Wikimedia Commons
麻薬関連犯罪への超法規的殺人を含めた強硬な対応策や硬軟を使い分ける対中外交、さらに対米一辺倒だった前大統領時代からの修正、連邦制導入の検討などの多くの課題を抱えながらも中間選挙の結果で示された国民からの圧倒的支持を背景に現在も独自路線を貫いている。
戒厳令もこれまでの治安当局の努力で一定の成果をあげたと評価しており、戒厳令を解除することで「国内外からの投資」を促進し「マルコス時代回帰という批判」を回避してさらに政権基盤を盤石にしたいとの思いがドゥテルテ大統領には強いといわれている。
そのため軍、警察、内務自治省そして地元の判断と思惑を慎重に考慮して戒厳令を解除する方向で決断を下すものとみられている。
トップ写真:マラウィの戦いでのドゥテルテ大統領 出典:Wikimedelia Commons
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