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平成の大合併の失敗を教訓に

Japan In-depth / 2019年12月16日 18時0分

しかし、幻だった。人口は結果的には減少した。そもそも、合併特例債は、あくまで3割は行政側の借金だ。返済しなければならない。



▲写真 斎場 提供:丹波篠山市役所


「サービスは高く、負担は低く」。当時のまちのスローガンだ。住民は合併に大きな夢を抱いた。その間、借金は膨れ上がる一方だった。結局、総額は1136億円となった。


追い打ちをかけたのは、政府が地方交付税をカットしたことだ。財政は一気に悪化した。旧篠山市は破たん寸前にまで追い込まれた。「第2の夕張」が現実味を増してきた。


2007年に就任した酒井隆明市長にとって、最大の課題は、財政再建だ。市民参加の「篠山再生市民会議」を立ち上げた。市民会議は、財政悪化の要因について「甘い将来見通しと合併特例債を活用して身の丈以上の公共事業をした」「マネジメント感覚の欠如」と指摘した。その上で、大幅な歳出削減を求めた。


こうした市民会議の提言などを踏まえて、市は大胆な歳出削減を打ち出した。市職員に関しては、670人から450人にした。給与は市長が20%、市職員は10%、それぞれカットに踏み切った。さらに、各種補助金も引き下げた。小学校19校を14校にした。また、地域の公民館16館を閉鎖した。市民センターの図書コーナーは、職員の代わりに市民のボランティアが運営した。


こうした努力が実り、市の借金はピーク時の半分の642億円まで減った。酒井市長のリーダーシップで、旧篠山市は、財政破たんを逃れた。しかし、皮肉なことだと、私は思う。政府に踊らされてハコモノをつくったのだが、そのハコモノが、財政危機を招いた。旧篠山市の自己責任と言えば、自己責任だが、政府のやり方も問題があったのではないか。


こうした中、「令和の大合併」と警戒されている新たな動きが出ている。複数の自治体が連携する「圏域」だ。


安倍総理の諮問機関、地方制度調査会が「圏域」の論議を本格化させている。少子高齢化が進み、市町村単位で行政サービスの水準を維持するのは難しいとみているからだ。来夏にも最終答申を出す見通しだ。


冒頭にご紹介した元事務次官は、今回の圏域議論について「手法は、『平成の大合併』と似ている。小規模な市町村の将来不安をあおろうとしている。政府は懲りていない」と嘆く。


「平成の大合併」で、市町村の数は3200ほどから1700ほどに減少した。その分だけ、職員や議員が減ったのは事実だろう。行財政改革につながった側面もある。ただ、旧篠山市などを見ても、「罪」を見過ごすことはできない。功罪を改めて検証しないまま、「圏域」議論を具体化するのは危険だと思う。「平成の大合併」を同じ手法で繰り返してはいけない。


トップ写真:西紀運動公園温水プール 提供:丹波篠山市役所


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