私のパフォーマンス理論 vol.43 -アスリートの特性(陸上競技)-
Japan In-depth / 2019年12月22日 7時0分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
私のパフォーマンス理論 vol.43 -アスリートの特性(陸上競技)-
【まとめ】
一般社会と、競技者を取り巻く環境の特殊性に気づかなければ、前の世界の考えを実社会に持ち込んでしまい引退後の人生がうまくいかなくなる。
競技者の特性は1.こだわりが強い、2.正しさにこだわる、3.仲間を重視する
自分を知り、環境を知り適応すればアスリートの能力は発揮される
引退した後、多くの選手は競技以外の世界で生きていかなければならない。競技人生からの降り方とは特殊な競技時代の環境から新しい社会の環境に自分を合わせ直すということだ。この一般社会と、競技者を取り巻く環境の特殊性に気づかなければ、前の世界の考えを実社会に持ち込んでしまい引退後の人生がうまくいかなくなる。以下に競技者がもつ特性をまとめてみた。各スポーツ、ポジションでもかなりやることは違う。大きく分けてスポーツはチームと個人、対戦か一人か、意思決定の範囲はどの程度かの違いがある。
1、こだわりが強い
2、正しさにこだわる
3、仲間を重視する
1、こだわりが強い
アスリートは勝負にこだわる。スポーツではだいたいゼロサムゲームになっていて、あちらが勝てばこちらが負けるという構図になっている。何よりスポーツにおいての勝敗は残酷すぎるほど人生を分けるので、どうしてもアスリートは勝ち負けにこだわる。また、競技中は苦しいことが多く、重圧も強いために、精神的に追い込まれやすい。そのような環境において、何か一つの信念を持ちそれを貫くことは有利に働くので、結果として競技者のこだわりは強くなりやすい。こうだと決めたことや信じたことを譲らないという性質を持ちやすい。
一方で、社会の勝敗はそれほど明確ではない。そもそも誰がライバルかは時代によって変わるし、一部は手を組みながら一部は戦うということも起きる。また、そもそもゲームの根本のルールも変わる。この産業のこの戦いをしていると思っていたら、産業ごとひっくり返すようなことが起こり得る。一人でできることは限られているので、他者と協業する必要があり、目的のために妥協を迫られる。
そのような環境下において、アスリートのこだわりは軋轢を生みやすい。理想にこだわりすぎて妥協をしないので周囲の人間が嫌がる。負けてはならないと思いすぎているので一つ一つが試合のようになってしまう。高みを目指しすぎる意識が強すぎてムキになることも多い。現役時代はアスリートは負けられないから勝利できるが、社会においては負けられないのでうまくやっていけなくなる。
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