対中関係と民主化がカギ【2020年を占う・アジア】
Japan In-depth / 2019年12月28日 10時0分
▲写真 フンセン首相 出典:flickr photo by World Economic Forum
カンボジアに次いで河川開発や領有権問題で時に中国に反発しながらも、基本的に親中国のラオスやベトナムでは国内の政府批判勢力をマスコミ統制や民主化運動弾圧と力で封じ込んでおり、カンボジアに次ぐASEAN内の「非民主、独裁国家」として中国が巨額の経済支援を注ぎ込んでその経済的、政治的影響力の拡大を図っている状況だ。
こうしたASEAN内の中国による切り崩しは2020年もさらに激しくなり、他のASEAN加盟国との間で対中姿勢の2極化が明確に分かれる年となりそうだ。
■ インドネシア、タイなど4国が牽引
ASEANを概観してみると、ベトナム、ラオス、カンボジアは1党支配あるいは実施的な独裁政権が続いている。いずれも完全に民主的手法かどうかは疑問が残るものの一応選挙で国民が選択した政治体制であり、大きな社会変動は起きそうにもない。
ミャンマーも少数派イスラム教徒ロヒンギャ族を巡る国際社会による「民族浄化」「人権侵害」の批判に対しアウン・サン・スー・チー国家顧問が12月11日にオランダ・ハーグでの国際司法裁判所(ICJ)に出廷してまで「直接的な証拠がない」と軍によるロヒンギャ族の集団虐殺を否定するなど頑なな姿勢を貫いている。
しかし国内では多数派の仏教徒や政治に強大な影響力を維持している軍からの支持を背景にして安定的な政権運営を続けているのも事実。ASEANや国際社会での孤立を利用して影響力を行使しようとする中国に対してもミャンマーは警戒感を高めており、中国の浸透は容易ではないのが現状だ。
こうした中で民政選挙を経たとはいえ実質軍政が継続しながらも国王の政治的影響力が強まっているタイ、健康問題を抱えながらも国民の高い支持率を背景に強権政治を続けるフィリピン。そして庶民派大統領が再選して民主主義がそれなりに機能しているインドネシアと、マハティール首相が率いて独自路線を力強く歩んでいるマレーシアという4カ国が2020年もASEANを牽引することは間違いなく、各々に問題、批判を抱えながらも一応民主国家として存在感を示している。
一方でタイは軍政時代を引き継いだ与党による野党への圧力が強まり、フィリピンでは正副大統領の対立から正副大統領をペアで選出する内容などを含んだ憲法改正案が審議されており、インドネシアも与党中心に大統領や地方自治体の首長を議会が選ぶ間接選挙制の復活が議論される中、3国とも報道の自由や表現の自由への制限、少数者への差別問題、イスラム教過激組織によるテロと民主主義の屋台骨を揺るがしかねない問題を抱えている。
2020年は対中国外交とともにこうした各国で進んできた民主的改革の後退、逆行、圧迫への挑戦という新たな問題も噴出しそうだ。
トップ写真:ASEAN加盟国の国旗 出典:flickr photo by stefanusss
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