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福井方式「地方兼業」に注目【2020年を占う・地方創生】

Japan In-depth / 2019年12月30日 19時0分

「移住してもらうのは簡単ではないが、現役時代に、地方との接点を持ってもらう。定年後に、その地方への移住なども視野に入れてもらう」(前総務省自治財政局調整課理事官の橘清司氏、福島県庁出向中)。大事なのは、首都圏の“副業”をしたい個人と、地方を結びつけることだ。政府、そして地方自治体は、そのため知恵を絞る。


自治体関係者が刮目しているのは、福井県の試みだ。9月に、都心で働く会社員に兼業で働いてもらう人を全国から公募した。「地方兼業」だ。1-2人の募集枠に、実に421人が応募した。転職サイト運営のビズリーチと提携した政策だ。


結局4人選ばれた。彼らは、未来戦略アドバイザーという肩書で、福井県内で月2回程度勤務する。都道府県が兼業に限定して人材を採用したのは、全国で初めてだ。1回の勤務あたり2万5千円が支払われる。


4人は、福井県の長期ビジョンについて、策定段階から携わる。「ターゲットを絞った広報戦略は公務員の弱い分野。その分野に民間の力を借りるのは、合理的」(前出の橘清司氏)


採用された4人は、それぞれ東京都や神奈川県で広報やマーケティングを経験している。福井の魅力をより多くの人に伝える。それが彼らに課せられたミッションだ。


今回の福井の試みから浮き彫りになることがある。地方で働きたいというニーズが高いことだ。しかし、移住となるとハードルが高い。そこで、「地方兼業」という手段に落ち着いた。こうした人たちの間で、将来移住する人が現れるかもしれない。いわば、「急がば回れ」政策と言えよう。


この「福井方式」は今後、ほかの地域でも追随するだろう。東京在住の人で、地域の自治体、企業の誘いに飛びつく人は少なくないだろう。特技を生かして、生まれ故郷などで貢献する生き方は、新たな時代に合っている。


こうしたやり方は東京一極集中を是正できない、と否定的な意見も多い。「政府機関の地方移転や、企業の本社機能移転をより深堀した方がいい」(政府関係者)という声もある。


しかし、私は政府に過度な期待をかけること自体、おかしいと考える。明治以降続いた中央集権体制を崩すのはそもそも、容易ではない。地方創生は本気でやれば、国のあり方を根本的に変える。決定打がないのが当たり前なのだ。一つ一つは小粒でも、さまざまな政策を総合的に推し進めるしかない。


国の政策を批判する前に、重要になるのは、地方の動きだ。福井県のように真っ先に、動いて人材を獲得する。そんな機敏な行政手腕が求められている。国に期待してはいけない。「わがまちを守る」。そんな気概を持って、地方が“弾”を打ち続けることが大事なのだ。


トップ写真:看板を掲げる石破茂氏(左)、安倍首相(中)出典:2014年 首相官邸


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