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金正恩、経済の窮状を認める

Japan In-depth / 2020年1月22日 19時0分

次に経済の深刻さは、金正恩が「人民生活向上」のスローガンを掲げられなくなったことに示された。


金正恩は最高指導者に就任直後の2012年4月15日、金日成誕生100周年の記念日の演説で、「わが人民が二度とベルトを締め付けず、社会主義の富貴栄華を思う存分に享受するようにすることがわが党の確固たる決心」と述べ、関心を集めた。その後、機会があるごとに「人民生活向上」を力説し、毎年の新年辞で「人民生活向上」の単語が抜けることはなかった。


それから8年近く過ぎた今回の総会では「人民生活向上」との表現がなくなった。その代わりに「ベルトを締め付けて自力富強、自力繁栄」との表現が使われた。人民の耐乏生活が不可避であることを公式に認めたのだ。


これで「2度と国民を飢えさせない」と公約した2012年4月の演説は「真っ赤なウソ」となってしまった。



▲写真 平壌の農場で今年最初の金曜労働を行う省庁などの役人ら(2020年1月17日)出典: 労働新聞ホームページ


 


2、矛盾に満ちた課題の解決法


金正恩は、金日成が最も困難だった1956年8月の党中央委員会総会(8月宗派事件)で着用した白い夏服を着て現れ、「国家経済発展5カ年戦略」に代えた新たな目標として、「10大展望目標」というものを提示した。しかし、その実現方法は矛盾した内容となっている。


まず、「自力更生」の方針を掲げながら「統制と指導を強化せよ」と主張していることだ。


自力更生は国家単位の自力更生だけでなく、地域と機関及び企業、引いては個人単位の自力更生で、事実上「各々で生きる」ことを意味する。それは地域と機関及び企業と個人単位が分権化されなければ成功しない。ところが今回金正恩は、経済に対する内閣の統制と指導を強化せよと言っている。金正恩が強調した「国の経済組織者的な役割強化」と「自力更生」は正面から矛盾する。


次に「社会主義商業の原則を固守しながら国の利益と人民の利便を保障できるよう商業奉仕事業を改善せよ」と要求していることだ。


商業に対する国家の統制を強化しながら、消費者の多様なニーズに合わせよというのは相反する要求だ。


3つ目は、金委員長は内閣責任制、内閣中心制を強調するとともに「党の内閣に対する指導も強化せよ」と主張したことだ。


党の内閣に対する統制とは金正恩の内閣に対する統制であり首領独裁の統制だ。しかしこの統制があったから、これまで経済担当者の創造性は発揮できず内閣中心制が機能しなかった。


政治権力の経済活動に対する統制を緩めて経済活動の自由度を高めてこそ、すなわち改革開放に進んでこそ北朝鮮経済は復活するのだが、金正恩は統制を強めて経済の活性化を高めよと主張した。これでは経済の再生はありえない。


結局、金正恩は統制経済で経済活動を活発化させよと要求しているのだが、そんな魔法のような方法があるわけがない。金正恩が提示した方針はまもなく行き詰まるだろう。


今後、実務陣の悩みは深くなるとみられる。北朝鮮国内の混乱から目を離すことができなくなってきた。


トップ画像:農場を視察する金正恩委員長(2019年12月6日) 出典: DPRK twitter


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