新型肺炎、媚中貫くカンボジア
Japan In-depth / 2020年2月3日 23時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・中国から巨額経済支援受ける「独裁的親中政権」カンボジア。
・新型肺炎では対中関係を優先し、自国民に隠忍自重を強いる。
・「媚中」フン・セン首相が守るべきは自国民か中国か。
中国湖北省武漢を中心に今や中国全土そして世界各国に感染が拡大して、深刻な懸念が広まっている新型コロナウイルスによる肺炎(新型肺炎)の問題は、東南アジア諸国連合(ASEAN)でもタイやシンガポール、マレーシア、ベトナムなどで次々と感染者が確認されている。
そして各国が中国・武漢に限らず、中国各地からの定期航空便の運航停止や中国人の入国を制限するなど自国民への感染対策をあれこれと打ち出す中、中国との関係悪化を恐れるあまり、国民に隠忍自重を強いている国が一つだけある。それがカンボジアである。
カンボジアはフン・セン政権が中国による巨額の経済援助を背景に野党指導者を逮捕したり、野党支持者や政府に批判的なマスコミ関係者を弾圧したりとASEANの中で「独裁的親中政権」を維持し続け、孤立しているのが実状だ。
ASEAN関連の会議でも、例えば、南シナ海での中国の一方的権益の主張に対し、議長声明などで中国を名指しして批判しようとしても「全会一致」というASEANの原則があるため、カンボジア1国の反対で声明文の内容がトーンダウンしたり直接の名指しを回避したりするなど「中国寄り」の姿勢を一貫して取り続けていることはASEAN内では有名だ。
▲写真 フン・セン首相と李克強首相(2019年11月)出典: フン・セン首相 facebook
■ 心配無用、航空便も変更せず
カンボジアでは2月1日現在で中国人1人が新型肺炎に感染したことが確認されている。
首都プノンペンや南部港湾都市シアヌークビルやコンポンソム、世界遺産「アンコールワット」に近いシェムリアップは中国人観光客、中国人労働者が溢れている。
カンボジア政府が2019年12月に発表した統計によると、2019年1月~10月にカンボジアを訪問した中国人は前年比約25%増の204万人で海外からの訪問者の実に40%を占めている。
そうした中国との深く密接な関係に配慮したためか、フン・セン首相は新型肺炎の感染者がでたことに関連して1月30日に記者団に対し「国民は心配することは何もない。なぜならカンボジア人は一人も感染しておらず、死亡もしていないからだ。むしろ新型肺炎に対する恐怖を抱くことこそ病である」と言ってのけたのだ。
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