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新型ウィルスに怯える金正恩

Japan In-depth / 2020年2月10日 11時0分

 


そして、「中央と道、市、郡の非常防疫指揮部に網羅された党と人民政権機関、人民保安、司法検察機関と人民軍の責任幹部は、新型コロナウィルス感染症を防ぐための事業を他のすべての事業に優先させ、ここに総力を集中しなければならない」とし「該当機関は、国境や地上、海上、空中などすべての領域で、新型コロナウイルスの進入路を完全に遮断封鎖しなければならない」とするとともに、「すべての単位で、国境地域に対する出張と休暇を極力制限し、外国人との接触を完全に遮断するようにして、国家非常防疫システムが解除されるまで、国際列車、国際航路運営や観光サービスを禁止し、入国者の隔離と医学的監視対策を厳格に立てばならない」と指示した。


 


この労働新聞の社説を見ても北朝鮮が今回の新型コロナウイルスの侵入をいかに恐れているかがわかる。1990年代中盤に300万人が餓死する事態に至ったときでさえ、飢餓対策よりも核とミサイル開発に専念した北朝鮮が、ここまで新型コロナウィルスを恐れるのは、金正恩の健康不安と関係しているかも知れない。



写真)ピョンヤンの町


出典)Flickr; (stephan)


 


当局は否定するが、すでに「新型コロナウイルス」は侵入


 


北朝鮮当局は1月31日現在、新型コロナウィルスによる感染症は北朝鮮で発生していないと発表している。北朝鮮保健省のソン・インボム局長は2月1日、朝鮮中央テレビのインタビューで「現在、わが国では『新型コロナウイルス感染症』は発生していないが、安心してはならない」と述べた。


 


だが全世界に広まっている中で、北朝鮮で患者が一人も発生していないというのは信じがたいことだ。私が得た内部からの情報では、北朝鮮で新型コロナウイルス感染症患者は発生している。脱北者が運営するユーチューブチャンネルのNKtvでも緊急情報として、中国・丹東の向かい側の都市新義州で患者が発生したと伝えた。その情報によると、新型コロナウイルス保持が疑われる人が452名、新型コロナウイルス保持確定者が 23名で、患者は全員「義州人民病院」に隔離されたとのことだ。この情報がどこまで正確かはわからないが、北朝鮮内部に情報源を持つ他の複数の高位級脱北者も、間違いなく患者が発生していると伝えた。


 


国境周辺の市場はすべて閉鎖、物価は急上昇


 


北朝鮮国内では、人の移動が徹底的に統制され、国境地域の市場はすべて閉鎖されたという。住民は完全に統制された中で、市場(チャンマダン)へも行けず、どうすれば食料を手に入れられるのかと不安をつのらせている。そして閉じ込めるのであれば配給でもしてくれなければ生きていけないではないかと怒りをぶちまけているという。


 


そればかりではない。マスクの価格が暴騰し、マスク一つの値段が米10Kgの値段になっているという。それさえも綿マスクだ。マスクだけでなく食料品を始めとした生活必需品の価格も暴騰しはじめており、価格が決まらない状態とのことだ。


 


しかしいくら統制しても、人々は生きるのに必死なので、密輸までは止めらないのが実情だ。だからこそ北朝鮮当局が国家体制の危機と捉えて立ち向かえと呼びかけているのだろう。 


 


医療と防疫体制がぜい弱なばかりか、住民の栄養状態が良くない北朝鮮で、新型コロナウイルスが蔓延すれば政治・経済に破局的影響が及ぶことは間違いない。いま金正恩体制は新型コロナウィルスに命運が握られていると言っても過言ではない。


 


トップ写真)錦繍山太陽宮殿


出店)Wikimedia Commons; Mehdistt 


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