令和の朝日新聞大研究 3 大誤報が示す劣悪化
Japan In-depth / 2020年3月17日 12時0分
以上、「控訴して高裁で争う方針を固めた」が一夜にして「控訴しない方針を決めた」に一転したのである。完全な誤報だった。
▲写真 ハンセン病家族訴訟で安倍首相は「控訴しない」と表明。訴訟原告団に「長い間大変な苦痛と苦難を強いることとなり深くお詫び申し上げる」と政府を代表して謝罪した。(2019年7月24日 首相官邸)出典: 首相官邸ホームページ
朝日新聞は当然、7月10日付朝刊に「誤った記事 おわびします」という見出しの訂正記事を同じ1面に載せていた。その訂正は「政府が控訴して高裁で争う方針を固めたと報じたのは誤りでした」と記していた。
その誤報の取材の説明なる記事が2面に掲載されていた。その内容を読んで、私の朝日新聞劣悪化という思いはさらに強まった。
《朝日新聞は政治部、科学医療部、社会部、文化くらし報道部を中心に、政府がどう対応するのかの取材を始めました》
《(そして政府は控訴するという見通しがあるとみて)首相の動向を知りうる政権幹部などに取材した結果、政府は控訴すると判断しました》
以上の説明にはさらに驚いた。朝日のこの大ミスは単に一人や二人の記者の勘違い、判断違いでもなく、事故的なミスでもなく、編集局全体をあげての集団的な取材をしたのに、なお根本からまちがってしまったと、開き直るように述べている点に、びっくりさせられたのだった。
この主張は外部からみれば、この大誤報は朝日新聞自体のまちがい、つまりは朝日新聞のいまの構造的、体質的な特殊性の産物だという自認のように響く。朝日新聞社全体をあげての取材方法や判断そのものが誤りだったことを認めているに等しいからだ。
さらにそのうえのショックがあった。
同じ7月10日朝刊の第34面に載っていた別の訂正記事だった。この訂正は前日の7月9日朝刊に掲載された二つの記事のなかの記述のミスのおわびだった。
その内容は以下だった。
《『行政が適正かつ公立的に運営される』とあるのは『行政が適正かつ効率的に運営される』の誤りでした》
《国際社会と緊密に『強調し』とあるのは『協調し』の誤りでした》
以上は些細なミスとはいえるだろう。だがあまりに初歩的、基礎的な誤りである。いずれも小学生レベルのミスである。
どの新聞社でもニュース記事は短くても、長くても、記者が書き、デスクが目を通す。同じ記事を整理と呼ばれる編集者がさらに点検して見出しをつけ、できあがった見出しつきの記事はさらに校閲がチェックをする。これはいかにインターネットやハイテクが導入されてもなお新聞作成の基礎だろう。
そんな厳重なはずのプロセスを経ても、「効率」が「公立」と誤記され、「協調」が「強調」になるミスが起きて、紙面に載るまで朝日新聞側のだれも気がつかない。しかも1面トップの記事が大誤報に終わったという同じ日に、そんなミスが同時に起きる。
いくら人間にはミスがあるといっても、私の長い新聞記者体験からは考えられない現象だと実感した。朝日新聞はついにこんな水準にまで劣悪化してしまったのかと、唖然としたのだった。
(4につづく。1,2)
**この連載は月刊雑誌WILLの2020年3月号に掲載された古森義久氏の「朝日新聞という病」という題の論文を一部、加筆、修正した記事です。
トップ写真:朝日新聞の広告(2009年10月17日 東京・渋谷駅)出典:flickr / Tatsuo Yamashita
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