米国の新型ウイルスとの戦い 3
Japan In-depth / 2020年3月26日 18時0分
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
【まとめ】
・米国、甘い対応で6週間を無駄にする。
・トランプ氏、WHOによるパンデミック認定後ようやく深刻さ認める。
・感染症や疫病は、迅速な対策が必要不可欠である。
米国で最初の新型ウイルスの感染者が確認されたのは西海岸のワシントン州だった。シアトル近郊に住むこの30歳代の男性は、中国の湖北省の武漢を数か月訪問し1月15日に帰国したが、間もなく発熱などの症状があり、近くの診療所で診察してもらった。
症状のサンプルはアトランタにある疾病予防管理センター(CDC)に送られ、1月20日に感染が確認された。しかし、この新型ウイルスがどの程度の感染力があるかは知られていなかった。感染者は入院先で監視下にあったが、ワシントン州知事は、この時点で一般の人が危険に晒されている状況にはないとした。感染病の専門家も、濃厚接触による感染のみを指摘していた。
その頃、中国はこの新型ウイルスが人から人に感染することを発表した。この時点で、中国での確認された感染者は約200人で死者は10数人程度だった。1月25日の春節を控え、中国人の大移動直前で感染の拡大が懸念される状況だった。この数が単に氷山の一角だったことが後に分かる。
1月22日、スイスのダボス会議に出席していたトランプ大統領は、特に中国で事業を展開しているビジネス業界に広がっている感染病のビジネスへの影響を懸念する声を一蹴するように、中国の対応を称賛し、習近平大統領を信頼しており、「米国は完全にコントロールしている」と豪語した。
米政府の明確な指針がないまま、CDCは独自の検査キットを開発し、これで対応ができるとしていたが、その後検査キットは不良だということが分かった。世界保健機関(WHO)などは既に信頼のおける検査キットは提供できる体制にあったが、医学レベルの高い米国は国際機関の支援を必要としなかった。この検査キットの不良さは、米国の感染病への対応を遅らせる一つの理由となった。
1月29日、195人の米国人が武漢からのチャーター便で帰米したが、検査を行い、三日間の監視体制下に入った。豪華客船グランド・プリンセス号に隔離されていた米国人のうち340人が2月17日に二機のチャーター機で米国に戻ったが、その内14人が感染していた。当初米国政府は、感染者は帰国させない方針だったが、実務レベルでの決定で感染者も帰国させることにした。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏、CDC長官に医師のデーブ・ウェルドン元下院議員指名
ロイター / 2024年11月23日 12時39分
-
ワクチン陰謀論のケネディ・Jr氏が厚生長官に 元大統領暗殺事件にも焦点か
Japan In-depth / 2024年11月21日 14時3分
-
米大統領選挙はトリプルレッドで終結か。次の注目点は「トランプ人事」
トウシル / 2024年11月14日 7時30分
-
世界で最も危険な暴走老人になる…海外メディアが報じたトランプ次期大統領(78)の「隠しきれない老化」の実態
プレジデントオンライン / 2024年11月13日 17時15分
-
焦点:歴史的選挙戦戦ったハリス氏、なぜ敗北したのか
ロイター / 2024年11月7日 19時9分
ランキング
-
1《沈黙続ける折田楓社長》「朝、PR会社の方から直接連絡がありました」兵庫県HPから“同社記事が削除された理由”
NEWSポストセブン / 2024年11月29日 7時15分
-
2【独自】放火疑いの41歳男性『楽しいことするよ』事件発生10分前にSNSに投稿 札幌すすきのガールズバー「ミリオン」爆発火災で犯行予告か
北海道放送 / 2024年11月29日 11時26分
-
3「男が女性客を殴った」非番の女性警察官に因縁をつけて顔面殴打、一緒にいた同僚警察官にその場で逮捕…泥酔の72歳の男「覚えていない」北海道小樽市
北海道放送 / 2024年11月29日 8時56分
-
4「103万円の壁」解消=政治改革、年内に法整備―合意形成幅広く・石破首相所信表明
時事通信 / 2024年11月29日 15時51分
-
5靖国落書き「処理水放出の抗議」 中国籍の被告が主張
共同通信 / 2024年11月29日 12時50分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください