護衛艦「まや」の速力切下げは正しい
Japan In-depth / 2020年3月29日 12時6分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・護衛艦「まや」の速力は従来イージス艦より1割は遅い。
・これは最高速力を見直した結果である。
・節約効果により、より多くの護衛艦の建造維持ができるようになる。
3月19日に護衛艦「まや」が就役した。海自7隻目のイージス艦である。また「こんごう」級、「あたご」級に続く新型イージス艦「まや」級の1番艦でもある。
その特徴の一つは速力性能の切り下げである。「まや」は従来艦と較べて最高速力は1割ほど引き下げられた。おそらくは公式発表の額面通り30ノット丁度(54km/h)しか出せなくなっている。
この速力切り下げは正しい判断なのだろうか?
妥当である。不要性能の見直しによる冗費削減であり艦隊戦力維持に役立つためだ。
■ 「まや」は正味最高30ノット
「まや」は従来イージス艦と同じ速力を出せるのだろうか?
公式には出せる。「まや」の最高速力は30ノットとされている。これは従来艦と同じ数字だ。「こんごう」級も「あたご」級も公式発表では30ノットである。
だが、実際には速力差がある。従来イージス艦のエンジン出力は10万馬力超である。対して「まや」級は6万9000馬力だ。そして「こんごう」「あたご」「まや」ともほぼ同じ形状、寸法、重量である。つまり推進抵抗もほとんど変わらない。それからすれば「まや」は間違いなく遅い。
大雑把な計算なら1割遅くなる。水上艦船に必要なエンジン馬力は速力の3乗に比例する。逆算すれば「まや」は前級から13%遅くなるのだ。
まずは3ノット(5㎞/h)程度は遅い。「まや」の速力は公式発表どおり最大30ノット丁度である。そう仮定すれば従来イージス艦は33~4ノット出せる計算となる。
▲図 筆者作成
この「まや」級の最高速力引き下げは妥当である。
なぜなら高速性能は不要かつ無駄だからだ。その理由は上述したとおり。30ノット以上の速度に使い道はない。それでいてコストを要する。その見直しは海自の艦隊戦力の維持に役立つためだ。
■ 実際には30ノットも出さない
速力引き下げは妥当である。
その1つ目の理由は高速力の不要化だ。30ノット以上の速力の使い道はない。
かつては軍艦は速力を競っていた。昔は軍艦同士が大砲や魚雷で戦っていた。その時代には速力は重要であった。早く動ければ戦闘では有利に立ち回れるためだ。だから戦前の軍艦は30ノット以上を出せるように作っていた。
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