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新型コロナ金正恩体制に激震

Japan In-depth / 2020年4月7日 11時0分

国連が去る3月25日に発表した「新型コロナ人道主義対応策」報告書は、北朝鮮の国境閉鎖、移動制限措置で物資の輸送が困難なうえ、貿易従事者、貨物車2万5000台以上が隔離され、北朝鮮の食糧安保が脅かされていると説明している。


また毎年春に北朝鮮を訪問して、新規の農業技術を伝えてきた米国親友奉仕団(AFSC)も、新型コロナ事態で3月中の訪朝計画を電撃キャンセルした。このことで、北朝鮮と外部との農業協力も完全に断絶された状態となっている。


 


■商人に対する収奪と軍中堅幹部への配給削減


自由アジア放送によると、平安南道の住民消息筋は3月23日、「先週平原(ピョンウォン)郡で地域保安署が、突然、米とトウモロコシ卸売り問屋の家宅捜索を行った」とし「家宅捜索で保安員たちは地中のキムチ貯蔵所をはじめ、住宅の前庭まで掘り返して1トン以上の穀物を発見しすべて押収した」と伝えたという。


そして「この日穀物を押収された米卸売商人たちは、新型コロナウイルス事態で国が混乱しているのに、食糧を買い占めて私服を肥やす金稼ぎをしたとの”罪”で地域保安署に連行された」とし「保安署では、商人たちに対するこれといった調査もせずに、次の日に労働鍛錬隊に送り込んだ」と述べた。こうしたことが北朝鮮の各地で起こっているという。


一方、金正恩委員長は最近、食料確保のために、長い間軍が管理していた軍独自の農地を内閣と共同管理するよう命令した。また軍の後方支援局を通じて軍中堅幹部の食糧供給を4月から6ヶ月間、これまでの配給量の3分の1にせよという通達も出した。


食料不足で軍人に回す食料まで削減しているのだ。連座制と徹底した監視で統制されている軍人が、これですぐさま不満を爆発させ「反乱」に出ることはないと思われるが、金正恩に対する忠誠心を一段と低下させていることは間違いない。



 ▲写真 トラックの荷台に乗って移動する北朝鮮の軍人ら(2010年9月5日 平壌) 出典: flickr; Roman Harak


 


■軍の不満高まる中で新たな軍統制機関新設


外貨の枯渇に食料不足、そして軍幹部への配給削減などで軍の不満が高まる中で、金正恩委員長は軍の「クーデター」を恐れてか、軍の権力機関を直接総括監督する新たな非公開組織である「軍政指導部」を新設したようだ。金正恩直属のこの「軍政指導部」は、軍総政治局をはじめとする軍団司令部を掌握して、将官級軍幹部らの私生活まで詳細に点検する強大な権限を持つとされている。従来の統制方式、すなわち軍人事と思想検閲で軍を掌握する軍総政治局と軍幹部を個別に監視・盗聴する軍保衛司令部の統制だけでは、もはや安心できなくなったということだろう。


経済制裁に新型コロナウイルス事態が重なることで、金正恩体制はこれまでにない危機を迎えている。


 


トップ画像:北朝鮮の金正恩委員長 出典: flickr; Janne Wittoeck


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