新型コロナで米、ベネズエラに圧力
Japan In-depth / 2020年4月25日 23時0分
ベネズエラ原油生産は米制裁の強化に原油価格急落が加わり大幅に低下しているが、今回の措置によって一層減少するのは必至で、マドゥロ政権にとっては大きな痛手となろう。
▲写真 シェブロン製油所・南アフリカ(イメージ)出典:Wikimedia Commons; Discott
■ マドゥロ政権は支配強化の構え
マドゥロ大統領が麻薬密輸などで起訴されたことに関し、中南米の専門家の間では「1980年代末起きた米軍のパナマ侵攻を想起させる」(ペルー・カトリカ大政治学者)との声も聞かれる。パナマの軍事独裁者として君臨していたノリエガ将軍が1988年に麻薬密輸などの容疑で米国で起訴され、翌年末の米軍侵攻によって身柄を拘束され、その後、米国などで獄中生活を送った一連の出来事は、中南米での米国の“力”を象徴するものとして記憶されている。
ただし、今回のカリブ海での米軍増強について米南方軍のフォーラー司令官は4月17日、国務省主催の“電話記者会見”で「米軍のベネズエラ侵攻の前兆か」との質問に対し、そうではないと明確に否定している。一方、マドゥロ大統領は米国の「移行政権」提案を即座に拒否するなど相変わらず、政権維持へ強硬姿勢を示す。カラカスの有力紙「エル・ナショナル」によれば、マドゥロ大統領は新型コロナがもたらした状況を利用して、支配態勢を強化しようとしているという。マドゥロ政権は3月上旬、非常事態宣言を発令、集会の禁止や外出禁止などの措置を講じるとともにグアイド氏側近らの身柄を拘束するなど、反政府派への締め付けを強める構えだ。
▲写真 マドゥロ大統領 出典:ロシア大統領府
■ 反政府勢力と妥協図る動きも
しかし、マドゥロ政権側が新型コロナによる新たな窮状と米国の圧力強化に動揺しているとの情報も数多くある。例えば、ベネズエラの隣国コロンビアの有力紙「エル・ティエンポ」は「マドゥロ政権内で軍人や官僚の忠誠心が崩れ始めており、彼らの一部は水面下で反政府勢力との妥協策を探っている」と伝えた。
グアイド“暫定大統領”はマドゥロ大統領を排除した形で、新型コロナに対処するための「非常事態政府」の樹立を与党側に提案している。こうした中、ベネズエラの独立系ネットメディア「エフェクト・コクヨ」は今月23日、米政府のエイブラムズ・ベネズエラ問題特使が同メディアとのインタビューで「マドゥロ政権内部および外部の多くの人々が米国提案の『移行政権』樹立案について検討し始めていると語った」と報じた。ベネズエラ情勢をめぐり再び、内外の動きが活発化してきたのは間違いないようだ。
(了)
トップ写真:ベネズエラ、コロナウイルス蔓延にマスクをする人々 出典:Pixabay
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