ドイツ紙が衝いた中国の真実
Japan In-depth / 2020年5月4日 11時0分
「中国政府はまずドイツに与えた経済的損害への賠償金として1650億ドル相当を支払わねばならない」
ビルト紙の記事は以上のような趣旨を述べて、賠償金の内訳として前記のように中小企業とか航空業などを列記した。その内訳を項目別の請求書の形式にして表記までしたのだった。
ビルトは日刊の発行部数220万、ドイツでは最大、ヨーロッパ全域でも首位に近い部数を誇る。特徴としてはタブロイド版のいわゆる大衆紙だが、それだけに一般的国民の心情を率直に表明する場合が多い。政治的にも保守系とされる。
ビルトのこの中国への非難と要求はアメリカやヨーロッパ諸国の大手メディアでも報道された。とくに対中賠償請求の動きが活発となったアメリカでは大きく報じられた。イギリスでもコロナウイルス感染により首相までが生死の境までいったとあって、この種の動きには敏感であり、主要メディアが詳しく報道した。
しかし、このビルト紙の強硬な主張に対して中国政府が即座に反撃した。すぐ翌日の4月16日、ベルリンにある駐ドイツの中国大使館がビルト紙への反論を公開書簡の形で発表したのだ。しかもきわめて激しい語調での反論だった。その骨子は以下のようだった。
「ビルト紙の記事はいま全世界に及ぶパンデミック(世界的な大感染)への責任を中国一国だけに帰するという劣悪な主張だ」
「中国はコロナウイルスに関する重要な事実を抑えたことはなく、国際保健機関(WHO)への情報提供の責務を果たしてきた。だがビルトはその基本的な事実を無視している」
「いまコロナウイルスと戦う多くの諸国は中国が国際保健規則に沿ってその発生を報告した後、国境を越えての拡散に備える時間は少なくとも1ヵ月はあったのだ」
「国際的に著名な複数の科学者たちは中国の敏速で断固たる行動がこのパンデミックの防止に寄与して、全世界に少なくとも1ヵ月の猶予を与えたことを確認した。だがビルトはその点をなにも記していない」
「一部の政治家や専門家、メディアの代表たちはウイルス抑止での自分の失敗や弱さから他者の注意をそらすために勝手な非難を誤った対象に浴びせている」
「ビルト紙はナショナリズム、偏見、外国嫌悪に火をつけ、中国とドイツ両国民の間の伝統的な友好を傷つけている。このパンデミック危機に対しては各国間の学習や協力こそが必要なのだ」
以上のような中国政府の反論は、これでもか、これでもか、という勢いだった。その内容は実際に武漢での感染症拡大が明白となった時期の中国政府の動きとは一致しない点も多かった。だがそんなことは構いなく、中国の反撃はまさに倍返し、激烈をきわめていた。
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