米「脱中国」新型コロナで加速
Japan In-depth / 2020年5月8日 18時0分
その「変化」はこれまでの中国への警戒や懸念を一層、増すこととなるかもしれない。あるいは中国の強大なパワーを改めて認め、これまでの対中姿勢を融和的な方向へと変えるという「変化」になるかもしれない。
この点でやはり最重要なのはアメリカの反応だろう。アメリカはこのウイルス事件の前から中国には厳しい対決姿勢をとるようになっていた。中国の言動はアメリカの基本の利害や価値観を否定するに等しいとして、その抑止に力を入れていた。中国も激しく反発していた。そんな米中関係の対立構図のなかで起きたウイルス事件だった。
アメリカがウイルス拡散に際しての習近平政権の隠蔽を激しく非難し続けていることは、すでに広く報道されてきた。この非難の姿勢は時間が過ぎても変わらないだろう。いや時間の経過、ウイルスの拡大とともに、アメリカ側でのその非難はより先鋭に、より強固に、なったといえよう。
このアメリカの態度の険悪化はたぶんに中国の感染拡大後の言動によってあおられた。
▲写真 トランプ米国大統領(2020年4月8日 ホワイトハウス)出典:flickr / The White House
中国政府は感染の当初での隠蔽工作の非など、いっさい認めていない。むしろ逆にコロナウイルスが中国で発生した事実をも曖昧にし、否定までするようになった。「武漢にきた米軍将兵がウイルスを拡散した」とまで述べる中国政府高官が出てきたのだ。
その一方、中国政府は自国内でのコロナウイルス感染症はもう克服できたと宣言するようになった。その克服の方法は共産党独裁政権らしい大都市の武漢の完全閉鎖という、有無をいわせぬ強硬で大胆な措置だったことを誇るようにもなった。
住民の意思とか権利をおもんぱかる自由民主主義の国家の政権には、そんな効果のある方法はとれないだろう、と示唆するほどにまでなった。
中国政府はさらに他の感染諸国の防疫を支援する構えさえ、みせ始めた。被害の甚大なイタリアに中国人医師団を送りこんで、支援にあたるようにもなった。マスクや人工呼吸器をヨーロッパの感染諸国に提供すると申し出るまでにもなった。
▲写真 イタリアに到着した中国の感染症対策専門の医療チーム(2020年3月18日 ミラノ)出典: CDCCA
正体不明で危険なウイルス感染症を自国内で発生させ、大あわてだった被害国から余裕のある支援国へと立場がすっかり変わってしまったかのようなのだ。
アメリカ側では中国政府のこうした態度の豹変にまたさらに激しく糾弾を強めてきた。
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