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米の北朝鮮非核化政策は不変

Japan In-depth / 2020年5月10日 7時0分


▲写真 金正恩委員長 出典:ロシア大統領府


ポンペオ国務長官は、今回は「金正恩委員長、重篤」という情報に関連して北朝鮮非核政策について語った。その内容は以下のようだった。


「北朝鮮の指導者が誰になろうが、私たちの使命は変わらない。金正恩委員長とトランプ大統領とが2018年にシンガポールで合意した『北朝鮮の完全な、検証可能な非核化』の実現こそがその使命である」


ポンペオ長官はここでは「完全な非核」(fully denuclearized)と、まず強調し、その後すぐに言葉を続けて、「北朝鮮の検証可能な非核化」(verified denuclearization of North Korea)と再強調した。


この表現はトランプ政権がこれまで時々使ってきた「最終的な完全、検証可能な非核化」(final fully verified denuclearization=FFVD)と同じである。そしてトランプ政権はこのFFVDという用語をCVIDとまったく同じ意味だと述べ、北朝鮮非核化の政策そのものとして使ってきた経緯がある。


要するに反トランプ勢力がしきりに言明してきた「トランプ政権はもうCVIDとされる完全な非核化をあきらめて、北朝鮮の部分的な非核化、あるいは核兵器凍結を目指し、それと引き換えに北朝鮮への経済制裁を段階的に解除していく」という状態にはないことをポンペオ長官はトランプ政権全体を代表する形で明言したのだった。


現に北朝鮮へのアメリカ政府や国連による経済制裁は緩和や解除は全くなされていない。金正恩政権はこの制裁の緩和の実現を最大目標としてアメリカに対して硬軟両面での揺さぶりや訴えを続けている。だがトランプ政権は北朝鮮にCVIDにつながることを証する非核化の措置をとることをまず要求しているのだ。


ポンペオ長官の今回の発言の契機となった「金正恩委員長重篤説」は、最初はアメリカのCNNニュースによって報じられた。トランプ大統領は最初から「アメリカ政府としてはその種の情報は得ていない」として、「CNNのフェイクニュースだろう」とかたづけていた。


その金委員長の状況の詳細はまだ不明だが、北朝鮮内部では同委員長が公式の行事に姿をみせた様子が詳しく報じられており、「重篤説」はほぼ否定された結果となった。


アメリカからの報道にはくれぐれもご注意を、ということだろう。だがその誤った報道に基づき、トランプ大統領の功罪をあれこれ断じる日本側の「識者」の言説も、もっと、ご注意を、と言えるようだ。


*この記事は 一般社団法人日本戦略研究フォーラムのサイトの「古森義久の内外抗論」という連載コラムからの転載です。


トップ写真:トランプ大統領とポンペオ国務長官 出典:Flickr; U.S. Department of State


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