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奇妙なり、「東京アラート」

Japan In-depth / 2020年6月11日 23時0分

ところがその日本人留学生は明らかに「freeze」 の意味がわからず、そのまま玄関へと前進していった。だから家の主は危険を感じ、銃を撃った。その結果、留学生は死んでしまった。


私は「アラート」という言葉からこんな事件までも思い出してしまうのだ。相手に通じない警告という意味あいで、である。



▲画像 バトンルージュ留学生射殺事件後、銃規制運動を展開する会のホームページより 出典: YOSHIの会(画 / 藤尾梨恵)


日本に数年、住むアメリカ人女性から「アラートって、なんですか」と最近、問われた。周知のように、日本語のラリルレロは英語のLともRとも受け取れる。だから英語のネーティブ・スピーカーでも、いきなりアラートという日本語表記をみても、元の英語に結びつかないのだ。


私がアメリカの大学に留学していたころ、日本の文化祭があり、和楽器の尺八が登場した。まだ英語が苦手だった私の日本人の友人がアメリカ人学生から問われ、辞書で調べたのか、尺八のことを英語で「バンブー・フルート」だと説明した。Bamboo fluteつまり竹の笛という意味である。


ところがその言葉を聞いたアメリカ人がけげんな表情をしたままだった。その人の耳にはバンブー・フルートはBamboo fruitと響いたのだった。つまり竹の果物とはいったいなんだろう、といぶかったわけだ。誤解の原因は私の日本人の友人の英語の発音にあったのである。それほど日本語でのラリルレロと英語のLとRの区別は日本人には難しいということだ。


アラートという日本語の意味がわからないともらした前記のアメリカ人女性は冗談ではなく、「ひょっとして東京のネズミということかしら」とつぶやいたので、笑ってしまった。


日本語のカタカナのアラートは彼女の耳には一瞬、「a rat.」つまり一匹のネズミとも聞こえたのだいう。東京アラートとは東京のネズミのことか、という笑い話となったのだが。


ことほど東京アラートという用語は不自然なのである。アラートという日本語を聞いて、すぐに警報として自然に行動を起こせる東京都民がどれほどいるのかと、まじめに考えてしまう。


トップ写真:新型コロナウイルスの感染拡大への警戒を呼びかける「東京アラート」発動に伴い、赤色にライトアップされたレインボーブリッジ(左)と東京都庁舎(右)(2020年6月2日) 出典:東京都庁広報課ツイッター


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