ウイグル人強制労働、日本企業に影響
Japan In-depth / 2020年7月30日 22時35分
米側の最近の情報によると、中国当局は政治洗脳教育を終えたウイグル人の若者を中国の他の地域の企業や工場に送り、労働に従事させるようになり、その人数は約8万に達したという。
その約8万人のウイグル人男女が中国各地のどのような企業で強制労働をさせられているかについはオーストラリアの安全保障分野では最有力のシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」(ASPI)が2020年3月に作成した調査報告書が最も詳細で正確な情報源とされている。同報告書は「売りに出されたウイグル人=新疆を越える再教育・強制労働・監視(Uyghurs for Sale, ‘Re-education’, forced labour and surveillance beyond Xinjiang. )」と題されていた。
同報告書は現地からの直接の情報に加え、偵察衛星の写真多数などにより、新疆ウイグル地区での強制収容、強制労働の実態を報告したうえで、2017年から19年までの間に同地区から中国領内の他の地域に送られ、強制労働を余儀なくされている約8万人のウイグル人男女の実情も具体的な工場や企業の名と所在地をあげて伝えていた。
前述の「ウイグル地域強制労働終結連合」もこのASPIの報告書を根拠にナイキやアップルなど特定の企業への抗議や質問を発していた。
同報告書の内容でとくに注目されるのは中国各地でウイグル人の強制労働を下請けのサプライチェーンなどで使っている主要企業として合計82社の名をあげた点だった。報告書はこの82社が「新疆ウイグル地区の外での生産活動で直接、間接にウイグル人の強制労働からの利益を得ている」と断じて、それぞれの企業についてウイグル人強制労働とのかかわりを下請けの中国側企業の具体名をあげて説明していた。
それら外国企業のなかには以下の日本企業11社の名前も記されていた。
日立製作所、ジャパンディスプレイ、三菱電機、ミツミ電機、任天堂、パナソニック、ソニー、TDK、東芝、ユニクロ、シャープ
以上のような報告書の調査結果について日本在住のウイグル人たちの集りの「日本ウイグル協会」が5月に上記の日本企業11社の社長あて書簡を送り、この「疑い」について質問と要望を伝えた。
7月までに同11社のうち10社から回答があったが、ほとんどが「当社の調査による限り、そうした事実はない」という趣旨の回答だったという。またいずれも強制労働を知りながら部品製造の下請けなどサプライチェーンの企業を使ったことはない、という否定の答えだった。
しかし中国の内部でのウイグル人の強制労働への国際的な批判はなお厳しく続くことが確実で、日本企業も中国内での生産活動での企業倫理が国際的に問われるという新たな局面を迎えることになったようである。
トップ写真:Uighur Protesters 出典:Flickr;Malcolm Brown
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