タイ深南部で相次ぐ爆弾テロ
Japan In-depth / 2020年8月16日 11時0分
タイ深南部は今回の連続爆弾テロが発生したパッタニー県とナラティワート県、さらにマレーシアと国境を接するヤラー県の3県と西に隣接するソンクラー県の一部地域を示し、いずれの県・地域も武装組織による爆弾テロ、銃撃、襲撃などによる治安状況の不安定が長年続いており、タイ政府や治安当局にとって頭の痛い問題となっている。
■ 学校再開で警戒強化の矢先
タイ政府はこれまでコロナ感染拡大の防止策として全国の大学を含めた教育機関の閉鎖を決め、一度は7月1日からの再開を目指したものの感染者数の動向などから延期されていた。一部学校での授業再開試行を経て、8月11日に教育基本委員会が全国の学校、教育機関に対して「8月13日から全面的再開を認める」との通知を出し、学校教育が再開されたばかりだった。
BRNなどは以前から小学校などの教育機関で働く教員や警備員などを仏教指導者、治安当局者と並ぶ襲撃対象にしており、軍や警察は教員や警備員の安全確保のために学校再開に応じて巡回パトロールを強化したばかりだったという。
公立学校の教員などは同じイスラム教徒でありながらタイ政府に同調した「裏切り者」として武装集団の襲撃対象となるケースが多いとされている。
■ プラユット政権が抱える難問
タイ深南部の3県などでは、4月にBRNと政府の間で「一時停戦」で合意した。これは地元の地方自治体や保健当局がおりからのコロナウイルス対策に専念することを目的にしたものだった。
しかし「一時停戦」の合意にも関わらず、その後も治安状況は好転せず、4月以降だけで少なくとも33件の事件が発生し、武装集団メンバー5人を含む19人が死亡、52人が負傷していると地元の人権団体などは報告している。7月中旬には爆弾テロで兵士1人が死亡する事件も発生、今回の死者を伴う爆弾テロはそれ以来という。
タイ深南部は政府にとっては長年の国内治安課題として解決が求められているものの、2004年以降だけで約5600人が犠牲となるなど一向に治安状況は改善していないのが実情だ。
現在のプラユット政権もコロナ禍への緊急対応とともに首都バンコクで頻発している学生や市民らによる内閣総辞職、議会解散、憲法改正、言論・表現の自由や王室改革を求める反政府・民主化デモへの対処も突きつけられている。
このような状況の中で深南部においてテロが頻発し、被害がさらに拡大すればタイ社会全体の緊張とタイ国民の不安が今後一層高まることになり、コロナ、民主化、テロという難問にプラユット政権は直面することになる。
トップ写真:タイ深南部パッターニー県 出典:Wayback Machine
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