大統領選はトランプ信任投票
Japan In-depth / 2020年8月25日 23時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー【速報版】 2020#35
2020年8月24-30日
【まとめ】
・米大統領選、民主党全国大会に続き、共和党の全国大会も開幕。
・米国民にとって選挙は一種の「熱気と狂気の伝染病」。
・共和党大会、演説者に元大統領や元大統領候補が一人もいない。
米国内政が動き始めた。先週の民主党全国大会に続き、今週は共和党の全国大会がある。民主党の方は新型コロナ対策もあり、殆ど全てが仮想空間で行われた。例年であれば、巨大な会場を4日間借り切り、全国から集まった無数の代議員や党関係者が、延々とお祭り騒ぎを繰り広げるのだが、当然今年はそれが一切なかった。
同じく例年なら、日本からも多くのジャーナリストや米国政治の専門家が、文字通り、あの手この手を使って党大会会場に潜り込み、現場からの中継や同時進行レポートを日本のメディアに垂れ流すところだが、今年はそれもなかった。会場の熱気や盛り上がり自体がそもそも感じにくいので、関係者は皆大いに困っていることだろう。
状況はアメリカ人も同じ。選挙は一種の「熱気と狂気の伝染病」だ。その意味で今週の共和党大会が如何に運営・演出されるかに関心がある。トランプ陣営の戦いぶりを左右する重要な要素だからだ。トランプ氏は民主党と同じような「仮想空間」には満足しない。彼なら、コロナ対策などお構いなく、出来るだけ多くの観衆を入れたいだろう。
▲写真 2016年大統領選 出典:Flickr; Gage Skidmore
この全国大会、日本時間では火曜日の朝から始まる。通常なら指名を受諾する大統領候補が最終日に登場しシャンシャンで終わるのだが、今回の共和党党大会は趣が異なる。そもそも演説する政治家の中に元大統領や元大統領候補が一人もいない。その代わりなのか、今回トランプ氏は四日間、毎日登場して喋るのだという。
他人事ながら、大丈夫なのか。如何に面白い芸人でも観客の「飽き」には勝てない。トランプ氏、確かに芸人としては面白いが、同じギャグを4日続けて見せられても、観客は食傷するだけだろう。トランプ氏の岩盤支持層は喜ぶだろうが、今トランプ氏がすべきは岩盤支持層の確認ではなく、新たな支持層の獲得・拡大ではないのか。
このままでは「トランプ政権」4年間の信任投票になってしまう。これがトランプ陣営の悪夢だ。それを避けるには、これまでトランプ経済政策で裨益した人々にその成果を再確認してもらう必要がある。それが成功するかどうかも、共和党大会の運営・演出次第。トランプ氏は如何に民主党と差別化するのか、決して容易ではなかろう。
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