高知氏自叙伝「生き直す」発売に寄せて最終章 読者から反響、続々
Japan In-depth / 2020年9月12日 23時5分
田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)
【まとめ】
・高知氏の自叙伝「生き直す」に多くの人から反響続々。
・高知氏の自叙伝は最高の依存症の啓発本
・「孤独の病」を抱える人々へ手を差し伸べる人が増えてくれたらと願う。
9/4に高知東生氏の自叙伝「生き直す」が無事発売された。
地方の書店では配本が遅れたり、アマゾンで注文された方も手に入ったのが翌週になったりと色々とアクシデントがあったようだが、現在はお手元に届いたようでTwitterやブログでも感想を書いて下さっている。また我々の元にも生の感想を頂いている。
読まれた方が皆さん一様におっしゃるのは「これは本当の話なのか?」「壮絶な人生」「映画になる」といった、高知氏がいかに過酷な星の下に生まれ、数々の試練を乗り越えてきたか驚かれているものである。
同級生の方や、地元の友人の方ですら、高知氏の内面や当時の詳しいエピソードを知り「感動した」とおっしゃる位である。
▲写真 高知東生氏 Ⓒ田中紀子
「よくぞ生き延びた」私たちの多くの仲間たちはこう語り、中には「高知さんこれだけの生い立ちを抱えて、よく覚せい剤ですんだよね」という人もいた。私も同じ感想である。
それを「不謹慎だ」と思う方々もいるかもしれない。けれども覚せい剤などの違法薬物を頼ってしまう人の中には、高知氏のように過酷な生い立ちゆえ、自分を大事にすることや、人と話しあったり、お互いが譲り合ったりして人間関係を円滑にすすめていくなどという経験ができないまま大人になってしまい、その後の人生に困難をきたす人もいることを知って欲しい。
そのために常に人の顔色を読み合わせてしまったり、感情をどう処理すれば良いかわからず抱え込んでしまったり、自分には価値がないと信じ込み人を頼ることができない人もいるのだ。実際、依存症者の中には機能不全家族で育った人々は多い。
罪を憎む気持ちは誰にでも当然あると思うが、違法薬物の自己使用者の一番大きな罪は、自分を傷つけてきたことである。その人の背景を思いやり、一般社会の方々には科せられた刑罰以外の、「排除」や「誹謗中傷」といった攻撃で裁かないで欲しいと願っている。
子供時代に孤独や孤立を抱えてきた人の心を溶かすのは、責めることではなく優しさや思いやりである。
高知氏はこの自叙伝を刊行するにあたり、多くの葛藤を乗り越えてきた。それはそうであろう。「自分は任侠の大物親分の息子だった」と書いてしまえば、今の社会ではもう完全に居場所を失うかもしれないリスクがあるのである。
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