尖閣問題「国有化以来」との表現やめよ
Japan In-depth / 2020年9月22日 19時0分
その釈放は当時の民主党政権の菅直人首相が中国政府からの圧力と恫喝に屈して、検察側に「釈放しろ」と命令した結果だった、という真相を当時の前原誠司外相が2020年9月になって証言した。
▲写真 船長釈放は菅直人首相(当時)の指示だったと公表した前原誠司元外相 出典:前原誠司ホームページ
中国側では当時、日本側の中国漁船拘束に反対して、日本へのレアアースの輸出を止めた。中国に駐在していた日本企業の4人を軍事機密の保護規則に違反したとして逮捕した。中国各地で反日の抗議やデモが始まった。みな中国政府の尖閣対策としての反日威嚇行動だった。そして日本側がこうした中国の威嚇に屈した後も、尖閣水域への中国艦艇の侵入を増していった。
そもそも中国側の日本領海侵入は漁船体当たり事件の前から増えていたのだ。そんな侵入の増加への日本側の抑止策が体当たり漁船の捕獲だったのだ。
一方、日本のメディアがよく指摘する「日本政府による尖閣諸島の国有化」はこの漁船摘発事件の2年後だった。2012年9月である。この日本側の動きにも中国の反発は激しく、日本領海への侵入を増加させた。だが日本側の国有化はあくまで中国側の果てしない侵入行動への防衛策だったのだ。
日本の主要メディアはこのへんの事実関係をまったく無視するかのように「日本政府の尖閣国有化以来、中国の活動が活発に」という趣旨の表現を繰り返す。いかにも日本側の行動が中国側の違法行動の原因となったかのような表現なのである。
このへんの事実関係を正確に認識して、もうこの「国有化以来」という記述や止めるべきである。そのかわりに「中国漁船の体当たり以来」、あるいは「中国漁船の違法衝突以来」という記述に変えるべきだろう。
なぜなら中国の尖閣への軍事がらみの攻勢、日本領海への違法の侵入が増え始めたのは、2010年9月の中国漁船体当たり事件前後からだからだ。「日本政府の国有化」というのは、あくまでその中国側の違法攻勢への防御的な対応だったのだ。
(この記事は 一般社団法人日本戦略研究フォーラムのサイトの「古森義久の内外抗論」という連載コラムからの転載です。)
トップ画像:海上保安庁の巡視船に体当たりする中国漁船(2010年9月7日尖閣諸島付近) 出典:YouTubeに流出した海上保安庁撮影の動画より
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
懸念される“尖閣の南シナ海化” 台湾有事を超える新たなリスク
まいどなニュース / 2024年5月2日 7時35分
-
中国船が一時領海侵入 尖閣周辺、今年12日目
共同通信 / 2024年4月26日 13時25分
-
中国船が一時領海侵入 尖閣周辺、今年11日目
共同通信 / 2024年4月25日 22時54分
-
中国船2隻、領海出る 尖閣周辺、今年9日目
共同通信 / 2024年4月6日 21時13分
-
中国船、尖閣周辺で領海侵入 今年8日目、3月30日以来
共同通信 / 2024年4月5日 15時36分
ランキング
-
1696年後の日本は子ども1人?…推計の東北大教授「少子化で絶滅する最初の国になるかもしれない」
読売新聞 / 2024年5月4日 13時35分
-
2幻の魚イトウの聖域に風力発電 原発相当計画に「最大級」の懸念
毎日新聞 / 2024年5月4日 6時0分
-
3岩田明子氏、「ウェークアップ」で自民党「3補選全敗」を解説…「党内からは次の衆院選挙では『岸田総理では戦えない』こんな声が公然と出ています」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 10時52分
-
4同僚女性、男の聴取後に不明 付きまとい巡り、山梨遺棄
共同通信 / 2024年5月4日 15時54分
-
5哺乳動物から人へ感染初か 米国の鳥インフルエンザ
共同通信 / 2024年5月4日 15時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください